魔女の下僕と魔王のツノ 6巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
魔女の家での日常も、魔王城攻略もファンタジーたっぷり、コメディー要素満載で面白いです。そして、ラブコメ方面でもついに進展がありました。魔女の下僕と魔王のツノ6巻の感想です。
同性愛とAB型
仕立て屋さんにふるまう料理の準備に取り掛かるアルセニオと、それを手伝うエリックとレイ。もうすっかりリリエンソール「姉妹」という感じです。肉体の性別や服装の話ではなく、所作や仕草がすっかり姉妹。
仕立て屋さんは魔法によって召喚されるハリネズミの魔物で、好物はナメクジ。という訳で、魔女の家の庭園の害虫駆除も兼ねたナメクジ・カタツムリ狩りとなるわけですが、雌雄同体のカタツムリの話から、性別や性的指向の話題になるのはこのメンバーでは自然な流れでしょうか。
世の中に多くの同性愛者がいるということに未だ実感がわかないアルセニオに、エリックが比較対象として挙げたのは血液型。
世界各国の同性愛者の割合は1%~10%。血液型AB型の人間の割合も1%~10%。確かにこの例は数の大きさが良く伝わりました。
恥ずかしがったら負け
梟の体に憑依して偵察に出ているエリックですが、その本体はソファーに座ったまま放置されています。上着がずり落ちて肩がむき出しになっていたのを紳士なロイドが直してあげます。
ところが、既に偵察から戻りその様子を覗き見ていた梟(エリック)は、楽しげな様子で自分の体が襲われるのではないかと思って見ていたと言い、あまつさえ、「パンツぐらい見たらどうだ根性なし、こんないい女が隙だらけだぞ」とロイドを煽ります。
挑発されたロイドは、無表情のままエリックのスカートへ手を伸ばすと、ゆっくりと捲りあげ……ようとしたところで、慌てて自分の体に戻ったエリックがスカートを押さえました。
エリックが赤くした顔をあげると、そこには余裕の笑みを見せるロイドの顔。相手を揶揄うつもりが揶揄われ、真っ赤になって悔しがるエリックが面白かわいかったです。
おまけの4コマ漫画では逆に油断したロイドが、悪戯を意図せずにスカートを捲りあげたエリックに赤面し、エリックが勝ち誇るというものもありました。
恥ずかしがった方が負けというこのやり取りは、他のバージョンも見てみたい気がします。
世界三大媚薬マンドラゴラ
魔王のツノ以外にも薬を作るのに必要な材料はあるわけですが、今回のターゲットは植物型の魔物・マンドラゴラ。
媚薬効果のあるマンドラゴラをレイに食べさせたい魔王によって、マンドラゴラのフルコースがふるまわれますが、調理されて盛り付けられているマンドラゴラが、まんざらでもないどころか、みんなノリノリでポージングしているのがシュールでした。
それにしても、世界三大媚薬の1つだというマンドラゴラに、目をキラキラさせて興味を示すエリックは本当にエリックです。女性用の媚薬を自分で試そうとする辺りが本当にエリックです。笑いました。
サムの災難
ヒュペルボレア編では終始むっつりとしていた印象の霊媒師・サム。
長い付き合いのエリックも「サムがどう出るか全然予想つかない…」とコメントする等、得体が知れない人物でしたが、今回はだいぶ素の性格が出てきました。
対象に憑依できる魔道具、「奴隷の首輪・王者の指輪」で犬のガストの体を借りて、アルセニオに魔法の使い方を教えに来ましたが、到着早々アルセニオにモフられ、エリックにもからかわれます。
さらには、魔王城での探索中にピンチに陥った一行の前に出てきてしまったために、レイの体に嫌々憑依して参戦する羽目になります。
一応、アルセニオが毒に侵され、レイは意識を失い、ロイドが1人で強敵のブレンダと戦っているというピンチな場面なのですが、犬(サム)と梟(エリック)の漫才染みたやり取りにほっこりとしました。
レイの体で加勢してくれというエリックに、慌てて断るサム。サムは「レイの体に憑依する≒自分が女になる」ということを嫌がったわけですが、エリックは「…何が問題なんだ?」と本気で理解できない様子。エリックは普段から女性の身体になっている上に、それを楽しんでいますからね。
むきになるサムと、本気で問題点がわからないエリック。噛み合わない2人に笑いました。
レイの告白
アルセニオの腹筋に興味を示したり、寝顔をのぞき込んでときめいたりと、日に日にアルセニオへの想いが高まるレイ。
マンドレイク(マンドラゴラのメス)で酔っぱらった挙句、脱いで、アルセニオを押し倒したレイですが、それでも本気にしてくれないアルセニオに、ついに打って出ました。
真っ向勝負で自分の気持ちを告げるレイと、終始押されっぱなしのアルセニオにニヤニヤしてしまいました。
アルセニオが魔物であるということも、ベティのことが命より大事(※主人として)ということも、レイにとっては何を今更といった話で、そういった諸事情を全部踏み越えて告白する様子がとても眩しかったです。
そんな眩しさを正面からぶつけられたアルセニオの返事は、「ごめん。俺にはどうしても君が男だとは思えない」でした。
アルセニオが主張するのは、レイが自分を男だと思うなら、男として愛されなきゃだめだということ。
「俺が好きなのは女の子のレイだ。君の心が男なら、このズレは必ず君を傷つける。俺は君の恋人にはなれない。君を心から愛する人を選んでくれ」というのがアルセニオの返事でした。魔物であることを受け入れられた上で告白されたアルセニオの、自身の偽らざる気持ちと、レイへの思いやりのある誠実な返事です。
要約すれば気持ちには答えられないという意味ですが、「女の子のレイは好き」という部分にレイが反応します。アルセニオ自身もうっかり本音が混ざっていたことに、後から気が付きます。
ここからのレイの攻勢には、ニヤニヤしたり、笑ったり、温かい気持ちになったりと大変でした。
恥ずかしがるアルセニオをベッドの隅まで追い詰めて壁ドンのポーズで事実確認。
喜びのあまり表情が崩れ、クネクネしたり、ベッドの上を這い回ったり、無言でアルセニオにスリスリしたり、挙句の果ては、アルセニオ側から抱きしめられるや否や目が輝き、アルセニオが引きはがそうとしても放れない抱き着きぶりを発揮するレイ。
人類最強の狩猟民族にふさわしい肉食ぶりを発揮するレイと、終始圧倒されっぱなしの被捕食者アルセニオ。ニヤニヤしたり、笑ったりと読んでいる方も大忙しでした。
レイとのふとした会話から、自分を苦しめていたのは自分の中の偏見だったということに気が付いたアルセニオ。
アルセニオに告白し、その気持ちを知って「女の子になって良かった」と零すレイ。
思わせぶりで、最高に盛り上がった状態で次巻に続くとなりました。