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共感できる人ほど、悶えること必至の中二病青春ストーリー : AURA アウラ 魔竜院光牙最後の戦い レビュー

※この記事が書かれた時点で、コミックは電子書籍化されていません。電子書籍は原作小説のみとなりますのでご注意ください。

 

 

タイトル:AURA アウラ 魔竜院光牙最後の戦い

  作者:(漫画)星野倖一郎(原作)田中ロミオ(キャラクターデザイン)mebae

  年代:2012年~2013年

  巻数:全4巻

 

あらすじ・概要

 妄想を盛大に爆発させた暗黒の中学時代を乗り越え、ごく普通の男子生徒として高校デビューを目指す少年・佐藤一郎

 不思議な出来事や、非日常な世界への憧れを心に残しながらも、中学時代のトラウマからそれを直視できない一郎は、ある日、忍び込んだ夜の学校で“青の魔女”と出会います。

 彼の憧れる非日常の世界を肯定するかのような、神秘的な存在感を纏う少女に心躍らせる一郎でしたが、彼女は一郎の思っていたような存在ではなかったのです。

 妄想と現実、笑いとシリアスが痛いくらいにぶつかり合う青春ストーリー。

 

痛々しくて生々しくも、真っすぐな青春もの

 この物語は学園を舞台にした異能力バトル漫画などではありません。

 これは元「妄想戦士(ドリームソルジャー)」の主人公と、現役の「妄想戦士」の交流の物語であり、ままならない現実に立ち向かう少年少女を描いた青春ストーリーでもあります。

 作中で「妄想戦士」と呼ばれている人たちは、「重度の中二病」とも表現できます。

 中学時代に妄想を爆発させて失敗してしまった過去を持つが故に、「普通」であろうとする少年が、ままならない現実や、むき出しの悪意、人の話を聞かない人たちと戦うお話です。

 「妄想戦士」へのスポットライトの当て方も、単にコミカルに見える部分だけ描いているわけではありません。

 スクールカーストや、いじめの問題といった生々しい話も絡みます。

 空想に惹かれる理由として、非現実への憧れだけではなく、現実世界に対する拒絶が根源にある場合についても重たく描かれてもいます。

 妄想や設定を日常的に垂れ流す妄想戦士たちのコミカルで悶えるような痛々しさ。

 大きな失敗をしてしまった過去を悔いたり、狭量な現実を全力で拒絶したりといったシリアスで重たい痛々しさ。

 コミカルな面とシリアスな面、両方がしっかりと描かれています。

 本格的に妄想を爆発させた経験がなくとも、夜の学校や、月の光といったものに神秘やロマンを感じたり、空想の物語に心を躍らせたりした経験は誰にでもあると思います。

 これはそういう感性や、経験を大切に想える人たちの心に響く物語です。

 

 

こんな人にオススメです。

  • いわゆる「中二病」をテーマにした、単なる肯定でも、全面的な否定でもない、本質をついた物語を読んでみたい人。
  • ままならない現実との対峙、過去の失敗のトラウマ、矮小で狭量な自分への嫌悪。そういったものと向き合い、乗り越えていく青春ストーリーを読みたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 空想・妄想・中二病などについて「幼稚」、「下らない」という感想しか出てこない人。
  • 空想・妄想関係で黒歴史を持っている人は、間違いなく心を抉られます。現実で何かやらかしたという過去がなかったとしても、あれこれ空想をするのが好きなタイプの人は心にダメージを受けることになります。※私も受けました。心を抉られる覚悟の無い方にはオススメできません。