コミックコーナーのモニュメント

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ライドンキング4巻 感想


ライドンキング(4) (シリウスコミックス)

 

 ゴルドーの街を襲撃した魔族を単身で足止めし、散っていったジェラリエ・ゴルドー

 ベルのオリジナル魔法の応用で、瞬く間に要塞化が進むプルチノフ村。そこへ押しかけるゴルドーの難民たち。ライドンキング4巻の感想です。

 

混沌の使徒・魔族の文化

 以前出てきた魔霊王の様子からも、混沌の勢力は、ファンタジー的にも分かりやすい悪役側のポジションだと思っていました。

 ところが、ゴルドーの街を襲撃した魔族が、太陽神を信仰している街の住民を「地を枯らす日照りの邪神を祀る邪教徒」扱いしています。どうやら、単純な善悪に二分した悪役側ではなく、もっと味のある背景がある様子。

 殺した敵に「混沌の試練」を受けさせ、魂の汚れているものを不死者(アンデッド)にする等、独自の文化がある様です。※処刑時のルールとのことでした。

 「魔族」というのはこの儀式によって稀に生まれる一種の超人とのことです。

 前巻の街の外壁を壊して乗り込んで来る場面では、混沌の軍勢のシンボルマーク・混沌十字(ケイオスクロス)の象られたお揃いのマスクとマントを身に纏ってリングイン。もとい、登場していました。

 他にも、やたらと2つ名を付けたがる文化がある事をジェラリエに指摘されたりもしていました。

 実際に今まで登場した魔族は、「死の谷の牙エドゥ」・「死泉の魔女ミィナ」・「吹雪の銀閃リィナ」・「首狩りのヨシュアス」という様に、全員2つ名がついています。

 ジェラリエのことも「邪炎のジェラリエ」と呼んでいます。

 現代日本ならいざ知らず、ファンタジーな世界観では2つ名など珍しいものでもありません。

 しかし、明確なギャグだけではなく、シリアスなはずの場面ですら笑い所を用意してくるこの漫画。

 彼らの2つ名文化を笑い所と感じてしまいました。これは私が馬場康誌先生の術中に陥っていることに他ならないでしょう。

 

狐耳(仮)の姉リィナと狸耳(仮)の弟ヨシュア

 ゴルドーの街を襲撃した魔族の3人。リィナ。エドゥ。ミィナ。

 これまで登場した只人の敵役に比べると大分好感が持てるキャラクターです。

 魂の汚れている人は魔族になれないという話ですが、混沌の勢力側にも、魔族以外での外道は確認済みなので、やはり、一概にどちらの勢力が正しいという構図にはならない様子。

 太陽神側も只人がかなり好き勝手やっているせいで、混沌に改宗した種族・部族も出てきている様ですからね。

 さて、リィナとヨシュアスはどうやら姉弟で、四つ耳族という獣人種族から魔族になったそうなのですが、同じ種族、それも姉弟で耳の形が違うことが気になりました。

 私は獣耳にそれ程造詣が深いわけではないので、狐耳(仮)と、狸耳(仮)とさせていただきますが、頭の上と、頭の横に、獣耳ばかりが4つある四つ耳族の設定にも遊び心を感じます。

 これは「頭の上に獣耳が生えているキャラクターの頭の横に人の耳はあるのか」という問題・論争のパロディーだと思うのですが、わざわざ4つの耳を全部獣耳にする点がユニークです。

 その内に、犬耳や猫耳の四つ耳族も出て来そうです。兎耳の四つ耳族はどうなるのでしょうか。物語とはあまり関係のないところで想像が膨らみます。

 

要塞化したプルチノフ村とキャンピングキャルマー

 ベルのオリジナル魔法の応用で、瞬く間に要塞化したプルチノフ村。

 押し寄せた難民による食糧問題も、魔法で解決。

 大統領が獣王ヤムドゥアに貰った「朧げな記憶を蘇らせる」加護によって、過去の授業の記憶や、視察に訪れた工場や、研究所で見聞きした内容を鮮明に思い起こせたことで、植物の超高速促成栽培が実現。大統領の魔力量あっての力技でもあるようです。

 元々、大統領の魔力量や、ベルの技術者としての能力は、現地でも常識外の代物の様ですが、既出の魔法や加護の応用技で、ご都合主義にならずにサクサク展開が進むのが凄いです。無駄なく、物語として描くべきことはしっかりと描き、細かい所まで読者を楽しませようという配慮を感じます。

 炊き出しをする子供の背後で、皇帝魔熊のベイダーがにらみを利かせていたのも、さりげなく大統領の手腕が感じられる場面でした。難民は善人や、大人しい人ばかりではありませんからね。

 村の諸問題も解決した大統領は、魔族の長と直接交渉するために旅立ちます。

 専用の櫓を装備してキャンピングキャルマーになった地竜キャルマー。本人が嬉しそうなのがかわいかったです。

 

ミノタウロスの勇者、ウィンドス・ボルトス

 うっかり口を滑らせたヨシュアスによって、魔族が海底ダンジョンを通って進軍してきたことが判明。早速、大統領一行は海底ダンジョンへ向かいます。

 そこで待ち構えていたのはダンジョンの門番、ミノタウロスのウィンドスとボルトスでした。

 大統領とキャルマーが即座に応戦。援護をしようとするベルたちですが、これはタッグマッチだと断るプルチノフ大統領。

 すると、ミノタウロス達は武器を捨て、素手でツープラトン技を繰り出し、キャルマーを沈めます。

 唐突に始まるプロレス。なんてノリのいいミノタウロス達でしょうか。

 2対1になっても戦意の衰えない大統領に、ウィンドスが踏みつけて攻撃。大統領はその足を捕らえると、ドラゴンスクリューで倒し、頭上を取り、「大統領流、猛牛焼印押(ブルブランディング)」で沈めます。

 ミノタウロスの巨体と大統領の体格差、にも拘らず技が決まっていることがわかる構図、砕け飛び散る大小の床の破片で、技の威力と勢いも完璧に表現されています。

 小さな人間が相棒をあっさり沈めたことに驚くボルトスを見据え、「次は君だ」と告げる大統領。冷たさすら感じる淡々とした様子が格好いい1コマですが、何故か笑いがこみ上げて来ます。

 地を這うような超低空で繰り出されたボルトスの角を脇で抱えるように受けた大統領。そのままボルトスを持ち上げ、「大統領流、猛牛岩石武者落とし」。大統領がいつものアレで作り出した石柱に、頭から垂直に落とされ、沈むボルトス。

 シリアスな場面。高い画力で生々しい質感の描写。ミノタウロスの巨体のスケールが感じとれる構図。迫力満点の戦闘シーンです。しかし、笑いがこみ上げて来ます。

 体格差のある相手を正面から力技で圧倒するという構図は、他の漫画でもよくあります。ギャグ調のものであれ、シリアスな場面として描かれているものであれ、数多く目にしてきました。

 この漫画のそれは、そんな中でも、絶妙な調整が施され、シリアス調なのに笑えました。

 大真面目に戦っているだけで笑えます。戦いの迫力がそのまま笑いに変換されます。これを狙ってできる馬場康誌先生が凄いです。

 作品全体の雰囲気のようなものや、微妙な調整もあるのでしょうが、分かりやすい要素が大統領のキャラクター。

 現代から召喚された存在であるにもかかわらず、ファンタジー世界の現地民より、ファンタジー方向へ振り切れているプルチノフ大統領。

 そのとんでもぶりが、全てを笑いに収束させます。

 

ボッチの進化とホッチの可能性

 大統領がプルチノフ村の食料問題を解決し、魔境への旅の準備をしていた頃、山籠もりをしていたボッチ。

 形だけではなく、実際に修行の成果もあった様で、座禅を組んでいる所に現れた蠍尾獅子(マンティコア)も一蹴します。「絶!!竜巻抜刀脚(ボッチロビンソン)!!」、「砕!!貫虎抜刀脚(タイガーソバット)!!」と技名にパロディーの香りがします。

 かわいいボッチが座禅を組んだり、かわいいのに、ここまで圧倒的な強さを発揮したりしている絵面自体が既にギャグですね。技を繰り出している時の表情もかわいいです。

 ところで、この蠍尾獅子なのですが、本来ならば黒帯(サキやベルよりも上)の冒険者がパーティーを組んで討伐するような相手です。それを秒殺するボッチ。

 具体的な強さの指標がわかるとここでも笑えるのですが、さらにもう少し想像力を働かせてみます。

 1巻でホッチ達の初登場時、解説に戦闘能力に関する情報はありませんでした。

ボッチは元々野生だった個体ですが、サキやベルのホッチにもボスとして認定されています。それが大統領の影響で蹴り技を覚え始めたわけです。

 さて、ボッチが特に優れた個体で、戦闘に向いた気性であることも間違いはなさそうですが、4巻のオマケ漫画で、他のホッチ達もボッチと一緒に座禅を組んでいる場面がありました。

 作中の描写を見るに、ホッチ達はかなり知能が高く、仲間同士鳴き声で意思伝達もしている様です。大統領の影響でボッチが修めた技が、他のホッチに伝わったら、さらにそこから別のホッチ達に伝わっていったらたらどうなるのでしょうか。

 ホッチ達のポテンシャルを大統領が解放してしまったのだとしたら、将来的に面白いことになるかもしれません。

 海底ダンジョン突入時に、3つに分断されてしまった大統領一行ですが、その内の1つがサキと3匹のホッチ達という組み合わせでした。

 次巻で、かわいいホッチ達の可能性が見られそうでワクワクしています。

 

 

 竜や古代文明に関する話、魔素や魔術の蘊蓄など、舞台装置的な意味での世界観も少しずつ明らかになってきました。

 魔族にすら協力する魔導院の動向も気になる所です。

 ただ、プルチノフ大統領が絡むと、どんな展開も最終的にはギャグになります。

 ヨシュアスから「恐ろしい魔境の生態」の話を聞いてワクワクドキドキする大統領。今まさに、大鷲蜂(メガホーネット)の群れに襲われている仲間の元へ、とても楽しげにその女王蜂で乗り付ける大統領。笑いました。

 ギャグはもちろん、物語的にもどんなとんでもないことが起きるのか、楽しみにしています。