コミックコーナーのモニュメント

「感想【ネタバレを含みます】」カテゴリーの記事はネタバレありの感想です。 「漫画紹介」カテゴリーの記事は、ネタバレなし、もしくはネタバレを最小限にした漫画を紹介する形のレビューとなっています。

画力とギャグのツープラトン : ライドンキング レビュー

 

タイトル:ライドンキング

  作者:馬場康誌

  年代:2019年~

  巻数:既刊12巻

 

あらすじ・概要

 中央アジアの一角、プルジア共和国。大国から武力で独立を勝ち取ったこの国を乗りこなしているのは、建国の英雄にして終身大統領アレクサンドル・プルチノフ。

 プルチノフ大統領は人一倍強い“騎乗欲”の持ち主です。「乗りこなす」という行為が大好きな大統領は、これまでも様々な機械、様々な生き物、そして国家でさえも乗りこなして来ました。

 しかし、おおよそ乗れるようなものにはすべて乗ってしまった上に、職務に追われる日々。

 ある日、大統領をテロリストが乗ったトラックが襲撃。

 プルチノフ大統領は、これを鍛えぬいた肉体と、磨き上げた技であっさりと撃退しました。ところが、テロリストを退けた大統領を思わぬアクシデントが襲います。

 次に大統領が目を覚ますと、そこは見たことも乗ったこともない生き物が空を飛ぶ異世界でした。

 最強大統領の異世界長期休暇が、今、始まります。

 普通の異世界召喚・転移モノとは一癖も二癖も違うファンタジー・冒険・アクション・ギャグ漫画です。

 

最強大統領が全てを笑いへと誘う

 この漫画のストーリーは、いわゆる剣と魔法の世界への「異世界転移」や「異世界召喚」というもはや一種のジャンルと化した形式に沿ったものです。「異世界に召喚されて冒険する」端的に言ってしまえばこれです。

 その上で、この漫画の特徴としてあげたい点は3つあります。

 1つ目は漫画としての単純なクォリティーの高さです。

 人物、背景、異世界ならではの動物や魔物に至るまで、非常に高い画力で描かれています。

 動物や魔物の質感と、スケールが丁寧に表現され、異世界の景色の美しさや、世界の広さが伝わってくる背景描写からは異世界の空気を感じられます。その伝導率が凄いです。

 2つ目は多様なギャグとパロディー。

 ちょっとしたものから、気合の入ったものまで、読者を退屈させず、楽しませようという工夫が徹底されています。高い画力で繰り出されるギャグは威力も割り増しです。

 特にパロディーの元ネタは、漫画、アニメ、プロレス、その他諸々と非常に豊富。

 あまりにパロディーの数が多すぎて、普通ならば食傷気味になりそうなものですが、画力の高さ故なのか、不思議な調和があり、すっきりと読めます。

 3つ目は主人公が最強大統領であること。

 現代人であると同時に、建国の英雄で、現職の大統領でもあるアレクサンドル・プルチノフ。彼自身が作中最大のパロディーと言えるかもしれません。

 いろいろな動物や乗り物に乗りたいという変わった欲望を持ち、自分の趣味のことになると我を忘れることもあります。様々な武道の達人であり、ファンタジー世界の現地人以上に我々の常識を無視してくることもあります。

 彼の非常に癖の強いキャラクターのおかげで、定番のそれ、悪く言えばありきたりな異世界冒険物語のそれの斜め上を行く展開や、思わず「何故そうなった!?」と突っ込みたくなるような絵面が生まれます。

 異世界冒険モノのお約束を把握した上で、その斜め上を行くとでも言うべきしょうか。

 ファンタジー冒険漫画であり、シリアスなストーリー展開もあり、同時にギャグマンガでもあります。

 豊富に盛り込まれたパロディーと、大統領のキャラクター、そして、作品全体の不思議な雰囲気で、最終的に「シリアスである」ことさえもギャグになります。

 真面目な場面でとんでもないパロディーを投入してくる等というのは序の口。この漫画にのめり込むと、ギャグらしいギャグがないはずの場面でも、何故か笑ってしまうことになるでしょう。

 パロディーが豊富だと言いましたが、恐らく、パロディーの元ネタを1つも知らなくても笑えます。そんな素敵なギャグマンガです。

 

こんな人にオススメです。

  • 異世界モノは好きだが、ありふれたそれにはもう飽きたという人。
  • 高い画力で繰り出されるハイクオリティーギャグマンガが読みたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • コミカルとシリアスの同居が苦手な人。
  • パロディーが苦手な人。※本当に嫌いな人。少し苦手ぐらいならば恐らく大丈夫です。