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地球のご飯は美味しい。クミカさんはかわいい。 : クミカのミカク レビュー

 

タイトル:クミカのミカク

  作者:小野中彰大

  年代:2016年~2018年

  巻数:全6巻

 

あらすじ・概要

 日常の中に様々な外星人(地球の外から来た人)の姿が珍しくなくなり、それでも暮らしの風景は現代とそれほど変わりのない日本。

 そんな日本にある出流原デザイン事務所で働く外星人のクミカさんは、呼吸と一緒に大気中から栄養を取ることのできる珍しい種族。

 彼女の星では「食事」とは嗜好品であり、浪費を嫌う彼女は地球に来てからも食事をとりません。彼女を食事に誘いたい同僚のチヒロさんにもけんもほろろの態度。

 ところが、風邪で体調を崩し、さらに、とあるアクシデントから栄養が足りなくなり、クミカさんは初めての食事を体験。その結果、彼女の身体は食事を覚えてしまいました。

 不器用で頑張り屋なクミカさんがかわいくて、彼女の美味しそうに食べる姿に癒され、所々笑える場面もあります。

 楽しく笑いながら、食べる喜びを再発見できるそんな漫画です。

 

SF漫画ではなく、グルメ漫画でもない。クミカさんがかわいい漫画。

 この漫画には、クミカさんをはじめとして、様々な外星人が登場します。みなさんとても魅力的ですが、この漫画が本格的なSF漫画であるかというと、それは違います。

 この漫画に出てくる日本には、多くの外星人が訪れていますが、それ以外は現代の日本と大きな変化はありません。

 設定に齟齬が生まれる様ないい加減さはありませんが、地球以外の星の情報は最低限かつ断片的で、想像力を掻き立てられるものの、論理的な考察が捗るほどには語られません。

 では、グルメ漫画であるかというと、それも違う気がします。

 毎回の様に食べ物や、飲み物が話に絡んできますが、いわゆる「グルメ漫画」の様に食べ物の知識や蘊蓄が語られたり、普段食べられない味や、作者のおススメの食べ物の味を解説しながら、漫画的技法で想像させたりする訳でもありません。

 この漫画は我々には当たり前のことである「食事」に関して、初心者であるクミカさんを通して、食べることそのものや、誰かと一緒に食事をすることの喜び・楽しさを再発見する漫画です。

 この漫画の見所は何と言っても、クミカさんが魅力的なことです。ただし、それには2通りの意味があります。

 1つ目はクミカさん本人のキャラクターとしての魅力。生真面目で、不器用で、頑張り屋で、家族思いで、思わず応援したくなります。素直な性格で、色々なものをとても美味しそうに食べるので、その様子を見ているだけで癒されます。

 それに加えて、地球人ではない彼女には、地球人にはない魅力があります。それは触手です。

 彼女の側頭部から這えている2本の触手は、とても器用に動く第2の腕であり、感情表現にも使われます。話が進むにつれて、この触手に何度も驚かされることになるでしょう。他にも外星人である彼女には謎の生態が多数あり、その部分でも意表をついて楽しませてくれます。

 2つ目は、クミカさんの魅力を十全に伝える漫画的表現力の魅力。表情描写の表現力がとても豊かで多彩です。本当に毎回、クミカさんの「新しい一面」を見ることができます。

 漫画的な表現・演出も、次々に新しいものが導入され、日常を描いたものでありながら、時に度肝を抜くような展開もあり、読者を楽しませようとすることに貪欲な漫画です。

 

こんな人にオススメです。

  • 人間的魅力にあふれ、地球人にはない外星人ならではの魅力もあるクミカさんのいろいろな顔を見たい人。美味しいものを食べた時の反応も見たい人。
  • 日常を描いた作品でありながら、アグレッシブに読者を楽しませようという漫画が読みたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 重厚な世界観の本格的なSF漫画を読みたい人。
  • 食べ物の蘊蓄や、食に対する拘りなどが語られるグルメ漫画が読みたい人。