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誰もが美しい世界は完璧な世界?:ビューティフルピープル・パーフェクトワールド レビュー

 

 

 

タイトル:ビューティフルピープル・パーフェクトワールド

  作者:坂井恵理

  年代:2010年~2012年

  巻数:全2巻

 

あらすじ・概要

 美容整形医療が大きく発展・進歩した一方、それ以外の景色は現代とさほど変わらない近未来の日本。

 文明の停滞の中、人々の美しさだけが大きく変わった社会。誰もが外見の若さと美しさを手に入れることができる美しい世界。

 そんな世界で生きる人々の抱える葛藤。歪さ、業。

 美しくなった世界で、それでも変わらない人の醜さや、社会の歪みを切なく透明感のある物語で描き上げる連作短編です。

 

美しい世界・美しい/美しくない人間・美しい物語

 美容整形医療のみが大きく発展した社会という独特の世界をフィルターにして描かれるのは、現実の世界のそれに通じる人間の醜さ、社会の歪み、そして、そんな中で日々を生きる人々の葛藤です。

 『ビューティフルピープル・パーフェクトワールド』というタイトル自体、中々に皮肉が効いています。

 美しくあれという社会に同調するか否か。美容整形を当たり前のこととして受け入れるのか、人生を変えるために使うのか、拒絶するのか。

 短編集であるこの漫画には様々な立場・年齢・考え方の人物が各話の主役として登場します。当然、その人が美容整形医療というものとどう向き合うのかも様々です。

 「当たり前に」若く美しい姿を手に入れるのか、もっと特別な使い方をするのか、それが当たり前である社会であえてそれを跳ね除けるのか。

 直接的にしろ、間接的にしろ、それぞれの話にはこの世界の発展した美容整形医療が関わってきますが、それはあくまでも舞台装置に過ぎません。

 物語の中核は、それぞれの人物が心の中に抱えるものです。生きる上で当たり前について回る様々な辛さや、悩みや、葛藤や、あるいは、誇りや、矜持や、言葉にできない思いなどです。

 高度な美容整形が当たり前になった社会という世界観のため登場人物は基本的に美男美女。すっきりとしていて何処か淡い印象も感じる絵。感傷的で透明感のある物語。

 人間の歪な部分や、醜い部分を描いているにも拘らず、漫画としてはさわやかな仕上がりになっています。

 視覚的に分かりやすく、くどくなく、読みやすい漫画である一方で、読後の余韻を出すためか、物語そのものや、人物の心理描写に曖昧な部分を残す演出が多く見られますので、その点では好みが別れそうです。

 

こんな人にオススメです。

  • 人間の醜さや歪さを描いた作品が読みたいけれど、「あまりグロテスクなのはちょっと」という人。
  • 感傷的で、切ない余韻のある短編漫画を読みたい人。※明るい終わり方をするエピソードもあります。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 登場人物の感情描写をあえて曖昧にするような演出が苦手な人。
  • 読者に物語の結末を委ねる漫画が苦手な人。