メランコリア 上 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
タイトル:メランコリア
作者:道満清明
年代:2018年
巻数:全2巻
あらすじ・概要
道満清明先生のショートショートストーリー集。上下巻の2冊構成。各話12ページのオムニバス形式です。
ポップで軽やかな画風に、多様かつマニアックなテーマが豊富に盛り込まれ、独特の感性で繰り出される不思議な雰囲気と、癖になる味わいのある漫画です。
世界の終末が迫る中、少年少女、刑事に殺し屋、メイドさんに幽霊と、様々な人物の視点で多種多様な物語が描かれます。
ポップな絵でシュールに描かれる世界の終末
この漫画は、ポップな癖のある絵でコミカルに描かれています。
絵だけでなく、話の展開もだいぶ突飛で、シリアスなはずの話でも何処か軽いノリで淡々と描かれています。
話の流れに関係もないのに突如マニアックなネタが挿入されたり、マニアックすぎて最初から最後まで突っ込み所しかないエピソードもあったりします。
全体的に何処か浮世離れしている様な、現実とは乖離したような、何処か非現実的な雰囲気の漫画表現で、現実の世界の憂鬱とした感情や、遣り切れない思いを描いているお話が多めです。かなり癖が強いです。
しかし、突拍子もないものに笑ってしまうような可笑しさがあったり、相次ぐ急展開に振り回される楽しさがあったり、侮れない表情描写があったり、心を抉ってくる何かがあったりもします。
無理やりまとめるのであれば、シュールで独特の味わいのある作風と言えるかもしれません。
私はこの漫画から前衛芸術を連想しました。この漫画の方がもう少しわかりやすくて親切ですが。
各エピソード12ページずつ。あっちへこっちへといろいろな人々の物語が描かれながら、物語は世界の終末というクライマックスへ向けて収束していきます。
思わぬ所に伏線が隠れていたり、とんでもない話のつながり方をしたりもするので、油断できません。
むしろ、一度読み終えてから読み直すと気付ける伏線や、別の側面が見えてくる場面も多いので、2週目以降が本番と言えるかもしれません。
道満清明先生の過去の作品である『ニッケルオデオン』と近い印象ですが、あちらはエピソードごとに多少のつながりがあるも独立したエピソードであったのに対して、こちらは世界の終末を巡る1つの物語としての明確な形があります。その割に本当にあっちへこっちへと話が飛びますが。
『ニッケルオデオン』に興味のある方はこちらの記事をご覧くださいませ。
まとまりのないものがまとまって、少しずつ1つの物語を形作っていく過程にも、謎のワクワク感や、意表を突かれる面白さがありますので、ぜひ、振り回されてください。
身も蓋もない言い方をするのであれば、過去に道満清明先生の漫画を読んで面白いと思った人へは、自信を持ってお勧めさせていただきます。過去の作品を読んでいるとニヤリとできるネタも仕込まれています。※もちろん過去作を知らなくても楽しめますが。
これまで道満清明先生の漫画を読んだことのなかった人にも、ぜひ、ぜひ、チャレンジしてほしい漫画です。
こんな人にオススメです。
- 12ページごとの物語を楽しみながら、超展開に振り回されたい人。
- マニアックなテーマや、ニッチなネタが好きな人。
こんな人にはオススメできません。
- 王道の展開をストレートでわかりやすい表現で描いた漫画を読みたい人。
- マニアックなネタの多用や、サブカルチャー然とした空気が苦手な人。