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読切SF「虚無を行く」がとにかく凄い : 水上悟志短編集 放浪世界 レビュー


水上悟志短編集「放浪世界」 (ブレイドコミックス)

 

タイトル:水上悟志短編集 放浪世界

  作者:水上悟志

  年代:2018年

  巻数:全1巻

 

あらすじ・概要

 あっさり、さっぱりとしている作風の様で、読者の予想の斜め上をついてくる展開と、丁寧な構成、独特のテンポが癖になる水上悟志先生の短編集です。

 舞台も現代日本から宇宙の彼方まで、物語も平穏な日常の1ページから、少し不思議なお話、果ては壮大で壮絶なSFまで取り揃えられております。

 読み切りの漫画が全部で5つ。色々な漫画が揃っていますが、どれも一癖以上あります。

 

圧倒的な完成度のSF読切、笑える大惨事、他にも他にも

 絵や演出はあっさりとしていますが、読者の予想を裏切る展開で、意表を突いてくる物語が面白いです。

 笑いにしても、設定説明にしても、感情描写にしても、何気ない日常の一幕の挿入にしても、読者に見せるべき情報の取捨選択とタイミングの選び方が、漫画としての構成が、凄く丁寧です。

 作りが丁寧と言いますか、痒い所へ手が届くと言いますか、神は細部に宿ると言いますか、説明の難しい面白さをしています。とにかく面白いです。

 収録されている短編は全部で5つ。漫画を作る時に何にどのようにフォーカスを合わせるかといったことや、画風も作品ごとに変化があるので、そこも面白かったですね。

 完全な同一人物になることを目指す双子の姉妹のお話『竹屋敷姉妹、みやぶられる』24ページ。

 人間の頭に住む「小さな宇宙人(ドワーフ)」を観測することのできる女性・まつりの不思議な日常『まつりコネクション』24ページ。

 アラフォーのサラリーマンが、ランプの精に子供の頃の願いをかなえてもらうはずが、雑なランプの精のせいで、妄想全部乗せで大惨事になる「今更ファンタジー」24ページ。

 バケモノを食らう稼業「闇喰い」のおじさんと、おじさんに買われた毒見役の少女のファンタジー時代劇「エニグマバイキング」16ページ。

 団地で暮らす少年時代の思い出から始まり、壮大な物語へと発展していくSF漫画「虚無を行く」74ページ。

 最後の「虚無を行く」がもの凄く面白かったです。圧倒されました。

 100ページに満たないページ数の中での世界観の完成度と言いますか、読み切り漫画としての完成度がとにかく凄かったです。もちろんストーリーも面白くて、短編というよりも中編と言えそうな74ページがあっという間でした。

 

 

こんな人にオススメです。

  • わかりやすくて面白い漫画を短編で楽しみたい人。
  • 壮大なスケールで壮絶な物語を描くSF漫画を読みたくても、大長編を読んでいる時間がない人。

こんな人にはオススメできません。

  • 演出だったり、キャラクターだったりが派手な漫画を読みたい人。
  • SFジャンルに興味が持てない人。