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地獄の底で輝くもの : 角の男 レビュー


角の男 1巻: バンチコミックス

 

タイトル:角の男

  作者:山うた

  年代:2018年

  巻数:全2巻

 

あらすじ・概要

 角のない人間が、角のある人間を「鬼」と呼び、家畜あつかいする社会。

 角のない少年ユエと、角のある少年・ジャオ。2人は少年時代を共に過ごし、共に大空を飛ぶ夢を語り合う仲でした。

 しかし、ジャオは奴隷狩りに囚われ、鉱山奴隷に。

 夢を追いかけて、国の研究者となったユエは自身の立場を使ってジャオを救おうとしますが、立ちはだかるのは自分の罪と、現実という名の地獄でした。

 差別するものとされるもの。何処までも他人に残酷に、残酷なまでに他人に無関心になれる人間の姿。あまりに容易く弄ばれる命。そんな中で渦巻く怒りと憎悪。

 地獄の時代であがき続ける2人の物語の結末はいかなるものとなるのでしょうか。

 

消せない過去、償いきれない罪、それでも自分にできる事を

 『兎が二匹』でデビューした山うた先生の漫画で、ジャンルはファンタジーとのことでしたが、正直読み始めはそういう印象を受けませんでした。

 角のある民族が登場したり、人が乗れるサイズの鳥が登場したり、ファンタジー要素は物語の始まりから登場しているのですが、とにかく世界設定と、ストーリー展開に残酷な生々しさがあって、ファンタジーという印象ではありませんでした。

 ファンタジージャンルにも残酷な物語はありますし、そういった漫画も数多く存在しているのですが、この漫画はそういったものとも毛色が違う気がします。

 とにかく人の残酷さや、醜さが生々しいのです。リアルというより生々しいという感じです。人の残酷な面が生き生きしている感じです。

 残酷さが自然でした。だからこそ逆にインパクトがありました。

 光と影や、コントラストにこだわりを感じる漫画表現も、兎が二匹の頃よりもパワーアップしていて、山うた先生の独特な絵と共に、この漫画の生々しさを際立たせています。

 山うた先生の絵と、漫画表現だからこそ成立する世界観です。

 文化や風土にアジア圏の国を感じさせる国家・龍帝國。

 その国で差別される側の立場と、差別する側の立場の2人の男が、地獄の底で、大きな時代のうねりの中で、友との絆と、犯してしまった罪の償いのために、それぞれの立場で、必死にあがき続ける物語です。

 1話目から地獄です。読むつもりの人は覚悟しておいた方がいいでしょう。

 しかし、だからこそ、そんな地獄の中であがく人間の魂の熱や、主人公2人の友情の美しさが際立っていました。

 クライマックスの展開も衝撃的でした。

 

こんな人にオススメです。

  • 残酷な時代と社会だからこそ、人間の命と心が輝く、そんな物語が読みたい人。
  • 癖の強い漫画が読みたい人。癖のある絵や、独特の漫画表現で世界観を演出する漫画が好きな人。

こんな人にはオススメできません。

  • 見開きのズレが許せない人。※恐らく本来は紙の書籍で見開きを美しく見せる工夫であったのだと思われますが、電子書籍版ではズレが酷かったです。
  • 山うた先生の独特な画風に馴染めない人。