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デスゲーム運営者はマイホームパパ : 父さんな、デスゲーム運営で食っているんだ レビュー


父さんな、デスゲーム運営で食っているんだ(1) (角川コミックス・エース)

 

タイトル:父さんな、デスゲーム運営で食っているんだ

  作者:(漫画)いなほ咲貴(原作)みかみてれん

  年代:2018年~2019年

  巻数:全2巻

 

あらすじ・概要

 西暦20××年。デスゲームが合法化された近未来の日本。

 業界最大手にして、老舗のデスゲーム運営会社FATAER社。

 そのデスゲーム運営部門統括部部長・黒崎鋭司(くろさきえいじ)38歳。

 冷徹なデスゲーム運営者にして、いくつもの逸話を持つ業界で伝説の男。しかしてその実態は、悩める中間管理職にして、妻と娘大好きなマイホームパパでした。

 愛する妻子を養うため、磨き上げられた洞察眼と、驚異のアドリブ力を武器に、彼は今日も波乱に満ちた日常を切り抜けます。

 デスゲームが当たり前にある世界におけるデスゲーム運営者の日常を描く、勢いのあるコメディーです。

 

狂気の世界観と勢いのある展開が面白すぎる

 この漫画はいわゆるデスゲームモノではありません。凄惨な殺し合いの緊迫感を演出するサスペンス調の作品ではないのです。

 デスゲームが合法化された近未来の日本という世界設定から、SFを想像する人も多そうですが、SFでもありません。社会派のSFと言えるほど、リアリティーが練り上げられていません。

 これはデスゲームが合法化された日本という世界設定を下地、そして同時に、最大の突っ込み所としつつ、デスゲーム運営者・黒崎部長の理不尽を笑う「不条理と書いてシュールとルビを振る」感じのコメディーです。

 ちなみに黒崎部長に降りかかる理不尽と、彼が振り撒く理不尽の両方があります。

 勢いのある展開で強引に笑わせようとしたり、勢いまかせに強引にストーリーを押し進めたりもしますが、単なる勢いだけの漫画ではありません。

 世界設定から始まって、何から何まで突っ込み所の宝庫。勢いのある展開と、ストーリー性もあり、絵のクオリティーも高いです。

 これらが化学反応を起こした結果、読者の腹筋が爆発します。

 絵のクオリティーが高く、一見シリアスに見える場面もあるため、読んでいる内にコメディーであることを忘れてしまうこともあるかもしれません。

 そして、この漫画をシリアスな物語として見ると、突っ込み所満載の世界設定が気になって、白けてしまう人もいるかもしれません。

 だからこそ、この漫画を読む人には、しっかりと認識していただきたいのです。この漫画はコメディーなのだと。

 最初からコメディーであることを割り切って読むと、非常に、非常に面白い漫画です。

 コミカルな場面も、シリアスな場面も、特にどちらにも振れていない何気ない場面も、全て突っ込み所で、笑い所です。

 なぜなら、「デスゲームが合法化されて当たり前の光景になっているにも拘らず、それ以外は私たちの世界と何も変わらない日本」という世界設定それ自体が、この作品最大の不条理(シュール)であるからです。

 そんな狂気の世界観と、そんな美味しい素材の味を十分に活かす漫画表現の上に成り立っているこの漫画。

 分かりやすい笑い所はもちろん面白く、何気ない場面も、ある意味で狂気的な世界観を意識することで、立ち所に笑い所に変わります。

 そんな素敵すぎるコメディーです。

 

 

こんな人にオススメです。

  • 勢いのあるコメディー、クオリティーの高いコメディーを読みたい人。
  • インパクトのある絵面で笑わせる手法や、大真面目な顔で繰り出されるボケが好きな人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 凄惨で緊迫感のあるデスゲーム漫画を読みたい人。※この漫画はいわゆるデスゲームモノではありません。
  • 価値観や倫理観が大きく変わった世界を描くハードな近未来SF漫画を読みたい人。※デスゲーム関連以外は私たちの時代と変わらず、SFとして読めるほど世界設定は練り込まれていません。