タイトル:女心@男子高校生
作者:竹屋まり子
年代:2022年
巻数:全1巻
あらすじ・概要
小説を書くのが趣味の男子高校生・夜野蓮(よるのれん)。
ネットへの小説の投稿もする彼には1つの悩みがありました。
自分の小説の感想一覧を埋め尽くす「女キャラがクソ」、「ヒロインの行動が突拍子もなさすぎる」、「この人の書く女毎回臭い」といった女キャラへの不評と罵倒の嵐。
「女心がまったくわからない!!」と悩む彼は、ついには、飲むだけで女心がわかるという怪しげなドリンクに手を出してしまいます。
その結果。連の身体は女の子になってしまいました。
1年たてば薬の効果は切れると説明書にはありましたが、もしも男性に恋愛感情を抱くと女性の身体で固定されてしまうとの記述もあり。
精神面でも女性化していく蓮はいったいどうなってしまうのでしょうか。
シンプルながらも良いTS(トランスセクシャル)漫画
TSジャンルにはこのジャンルならではのいろいろな見所があります。
異性の肉体への変化。
異性の精神への変化。
異性の服装や所作を求められたり、当事者を見る周囲の目が変わったり、それによって引き起こされる自意識の変化に、人間関係の変化。
アイデンティティーの危機。
周囲を巻き込んでの大混乱。
TSジャンルのどのような要素に醍醐味を感じるかは、人それぞれかと思われますが、この漫画はこれらの中でも「精神面での異性化と恋愛対象の変化」に重点を置いています。
いえ、それ以外の要素が大胆にカットされているというべきでしょうか。※まったくないわけでもありませんが。
全体で150ページ程。1話あたり8~14ページで全12話という短めのお話なこともあって、かなりテンポよく進みます。
身体が女性化した前後の混乱の様子などの描写はざっくりカットで1ページのみ。
学校に女子生徒として通う羽目になった主人公がどのように事情説明したのかも「と、いうわけで夜野は今日から女子になったらしいから」で済まされてしまいます。
その代わりに、精神面で徐々に女性化していったり、本来恋愛対象でなかった男子にときめいてしまったりする彼女の葛藤と混乱は面白おかしく描かれます。
漫画としては、全体的に丸みのある絵で、人物の描き方にやや大雑把な印象も受ける一方で、わずかな線の違いで微妙な感情・表情が繊細に表現されていました。
画面に映す情報を絞っていますが、その取捨選択は適切で、効果的な漫画表現や、上述の表情描写もあって、読みやすく、全体的にコンパクトにまとまっていながらも描かれるべきものはしっかりと描かれています。
TSジャンルに興味はあるけれど、あまり生々しいものや、マニアックすぎるものには抵抗があるという初心者にお勧めです。
TSジャンルを読む上で、精神面での変化の描写を重要視する人や、恋愛対象の変化や、アイデンティティーの危機というシチュエーションに興味の比重が大きい人にもお勧めです。
こんな人にオススメです。
- TSジャンルに興味はあるけれど、あまり生々しいものや、マニアックすぎるモノには抵抗があるという初心者の人。
- TSモノの中でも、精神面での異性化や、恋愛対象の変化によるアイデンティティーの危機を見るのが好きな人。
こんな人にはオススメできません。
- TSジャンルに興味がない人。
- TSモノの中でも、肉体面での変化や、異性の服装や、所作を求められる当事者の恥じらいや混乱を見ることに興味の比重が大きい人。