タイトル:ぜんぶきみの性
作者:浅月のりと
年代:2020年~2023年
巻数:全7巻
あらすじ・概要
「ときめき」をトリガーとして男女の性別が切り替わってしまう性転換症候群・通称TSS。
ある日、このTSS体質になってしまった少年・鷺宮了(さぎみやりょう)。
憧れの先輩である水上凪沙(みかみなぎさ)のいる全寮制高校へ入学するも、凪沙もこのTSS体質であり、男にも女にもなる了は特別棟で凪沙と同居することになってしまいます。
元男の両性と生まれつきの両性。可変的なTS(トランスセクシャル)体質同士。ときめくたびに性別が変わるクロッシングラブコメディー。
TSモノとしてもラブコメディーとしてもハイクオリティーな漫画です。
元男の両性と生まれつきの両性のラブコメディー
この作品の性転換症候群(トランスセクシャルシンドローム)・通称TSSは「ときめき」がきっかけになって性別が変わります。男の体である時にときめけば女に、女の体である時にときめけば男へとTS(トランスセクシャル)します。
主人公は元男のTSSで、その思い人もTSS体質。この時点でもう十分に面白そうですが、この漫画はこれだけでは終わりません。
この漫画は生まれてきて15年の間、男として生きてきたのに突然TSS体質になってしまった鷺宮了と、生まれつきのTSSであるが故に「異性」という感覚を知らずに生きてきた水上凪沙、この2人のラブコメディーなのです。
元男であるが故に、女性用の服を着たり、自身の思考の女性化だったりに抵抗がある了。憧れの先輩を追いかけて高校を決めるほど恋愛にはアグレッシブで、凪沙が相手だと途端にチョロくなります。
天然たらしのイケメン兼美少女で、男女の距離感がバグっている凪沙。いわゆる天然キャラですが、凪沙の「天然」には先天性のTSSであるが故の事情が窺え、人物造形にも深くTSSの設定が絡んできます。
こんな2人のラブコメディーなので面白くないわけがありません。
キャラクターや物語はもちろん、絵や漫画表現からも作者の浅月のりと先生のフェチズムがあふれ出しています。
男女の身体も部品の大きさ、骨格、その上の肉付きのバランスなどがかなり繊細に描き分けられていて、高い技術力とこだわりの強さが窺えます。
性転換時の体格の変化に了と凪沙で個人差があるのも面白い所です。
了は男の時は体格が良く、女の時は華奢。凪沙と比べると男性時と女性時の身長差がかなりあります。
どちらが男でどちらが女か、男同士か、女同士か、その時々で2人の体格差のバランスにも変化があって、相手の顔をどのようなアングルで見るかだって変わってきます。
その辺りの変化を見せつけるような構図やアングルの絵も多く、この辺りもフェチズムとこだわりを感じるポイントですね。
2人のアルバイト先であるコスプレカフェのメンバーも、それぞれ「性」というものに関係する様々な事情や悩みを抱えていて、両性の2人がきっかけになって、彼らの物語も動きます。
大きいコマの多い読みやすく、わかりやすい漫画で、ここぞという場面では大ゴマや見開きなどを活用し情感たっぷり。ラブコメディーとしても高品質です。
おまけ漫画でも幕間の面白エピソードや良質なTSが提供されます。
こんな人にオススメです。
こんな人にはオススメできません。