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お姉さまと巨人(わたし) お嬢さまが異世界転生6巻 感想その①


お姉さまと巨人 お嬢さまが異世界転生 (6) (青騎士コミックス)

 

 舞台は王都での決戦から4年後。

 異世界人をはじめ、寄る辺なき難民たちを保護するため、黒百合会(ブラックサレナ)を立ち上げたヒナコ。

 王国と魔国の間、法国の南東一帯を取り仕切る一大組織の首領(ドン)となった彼女。

 4年の間に何があったのか気になる新章が始まった『お姉さまと巨人 お嬢さまが異世界転生』6巻の感想です。

 今回は感想が長くなったため2つに分けてあります。

 

新章突入と4年の間に増えている姉妹

 新章開始と同時に挿入された断片的な回想が終わると、舞台は異世界の雪景色へ。

 カルラと共に、ヒナコ達の新たな妹、推定ケンタウロス族のウルス・ブロゲートが登場。

 【シスターフッド・オブ・ブラッド】の『シスター セカンド』のカルラと、『シスターセブンス』のウルスという紹介がされています。

 つまり、その間の姉妹もいると。

 そして、そのまま、帝国に拉致された難民たちを装甲列車から救い出すための作戦が開始。

 車内に潜入していた『エルダーシスター』ヒナコに続いて、『シスター サード』のトルガナーナも現着。そのコックピットから、何故か妹になっている『シスター フィフス』ウェンディと、前の巻のおまけで顔出し済みの黒猫剣士『シスター シックス』クロムも参戦。

 そして、新しい姉妹たちが強敵に苦戦し、さらに駄目押しの怪獣サイズの敵まで出てきた所で、満を持しての『シスター ファースト』エイリスが空から降ってきます。

 私は単行本派の読者なのですが、この漫画の掲載誌である『青騎士』の表紙を見かけた際に、「新章でのシスター揃い踏み」といった感じのイラストを見てしまっていました。シスターが増えていることも、その顔触れも知っていたわけです。

 それでも、この突然始まった難民救出作戦と一緒に、畳みかける様に新しい姉妹が登場していく展開は、すごく楽しかったですね。

 画面奥の崖の上を疾走するウルスと、いかつい装甲列車を挟んで、画面手前を走行するトルガナーナの見開き。

 トルガナーナの子機である義手で大暴れするヒナコ。

 列車に乗り遅れたせいで、トルガナーナにぶん投げられて突入する羽目になったウェンディとクロム。

 さらに満月を背に、怪鳥に空輸されて、着地の地響きをあげて登場するエイリスなど、絵にも展開にも勢いがあって魅せられましたね。

 エイリスの新装備、両手持ちサイズの十徳ナイフといった趣の「自動装填式十連杭射出機『十徳(ダシャグーナ)』」と、背中に背負った魔王のしもべ『第一のケモノ ガルーダ』での戦闘シーン。

 武器の変形と、ガルーダでの高速飛行を見せつける描写に勢いがあって、スケールの大きさ伝える構図も相変わらずで素晴らしかったです。

 姉妹での総力戦と、作戦完了と同時に「この子たちはみんな」「私たち氏族の姉妹(きょうだい)なのです」の全員集合の一枚絵でエピソードを締めるのも良かったですね。※私はこの時点で『シスター フォース』が抜けていることにまったく気が付いていませんでした。

 「姉妹」のルビが「しまい」ではなく、「きょうだい」なのは『シスター フォース』が男性の犬養さんだからではなく、巨人族の『氏族(クラン)』文化の影響ですかね。

 

いつの間にか姉妹になっていたウェンディ

 王都での決戦の後、ジュンコによって文字通り切り捨てられたウェンディ。

 聖剣によって第一から第三までの「機構」を奪われ、身体の半分を失った状態で川に捨てられた彼女。

 元々「きゃは」が口癖でしたが、前にもまして大笑いしていますし、その割に表情は歪。姉と慕っていたジュンコに裏切られたショックか、それとも、機構を奪われたせいで兵器としての身体が機能不全でも起こしているのか、かなり情緒不安定です。

 生きていたのは5巻のおまけ漫画で知っていましたが、ヒナコや『巨神』のことも「コロス…コロス…」言っていた彼女が、何がどうなってヒナコ達の妹になったのでしょうか。

 エイリスとカルラの喧嘩を煽ったりしていますし、表紙裏のおまけ情報だと、エイリスとカルラのことを「ブッコしたい」らしいですが、その一方で、姉妹たちのピンチに命がけの奥の手を使おうとするかのような描写もあり、さらに姉妹の絆を謳うヒナコの言葉には何やら複雑そうな表情。

 彼女とヒナコ達の再会がどのようなものであったか、彼女が今の姉妹たちをどのように思っているのか等は次巻以降のお楽しみの様です。

 それはそれとして、姉妹たちには馴染んでいるようですね。

 難民救出作戦中、怪獣サイズの敵と対峙するエイリスへ大声で警告する場面では、姉妹たちと息の合ったやり取りを見せてくれます。

「気ィつけろ その目ん玉デカいのは私と同じ魔導兵器だ」。

「『調教(テイム)』か『洗脳(ヒプノ)』の機構を持ってるはずだ」。

「わかってるな目を合わせんなよ!操られるぞ!!」。

 と大真面目に警告していたかと思ったら、ページをめくった先の大ゴマで「エロいことされるぞ!!」。

 ページの上半分で目をカっと見開いてお馬鹿なことを叫んでいるウェンディと、下半分での姉妹たちそれぞれのリアクションの対比がだめでした。笑いました。

 

魔王軍側仕え・ピルル

 この漫画は常からパロディーや、オマージュといった形で、他の漫画・アニメ・映画・ゲーム等の様々なネタが仕込まれているのですが、今回はいつにもまして多かったですね。

 代々魔王に継承されるという陸海空の「三つのしもべ」という元ネタそのまんまのネーミングまでもありましたし。

 明らかにいつもよりも多かったということは感じたのですが、正直全てのネタを拾えた自信はありません。多すぎます。

 そんな中でも一番インパクトを感じたのが、新キャラクターである魔王軍側仕え・ピルル。上記の青騎士の表紙を見た時に、この子も新しい妹だと思っていたのですが、どうやらカルラ個人の配下の様です。

 元ネタはジョージ秋山先生の月を象ったロボットの漫画に出てくる凄い名前の忍者ですね。

 1人で強敵・教会騎士タデウスと対峙するカルラ。そこに三つのしもべ第二のケモノ・『マンティ・コア』が到着。

 巨体のマンティ・コアに一瞬気を取られたタデウスがカルラの方へ意識を戻すと、その傍らでいつのまにか土下座しているというのがピルルの登場シーン。

 そう土下座で初登場。土下座でリングイン。土下座でエントリーです。

 この土下座や、やたらと低い自己評価までも含めてのオマージュなのですが、元ネタを知っていても異様さは感じますね。どこかギャグの様でもあり、不気味でもある異様さです。

 目はぐるぐるで涙目、牙の除く口元は痙攣しているかのごとく波うち、視線は常に下へ。卑屈さの権化と言いますか、常時パニック状態と言いますか。強烈なキャラクターですね。

 そして土下座のまま戦闘開始。

 いえ、戦闘シーンはカットされてしまっているので、戦いの結果、タデウスがどうなったのかは次の巻まで持ち越しですが。少なくともピルルはどうにもなっていないのだろうなという予感がありますね。

 ピルルの主であるカルラは、捕らえて情報を吐かせたいからタデウスを殺さないようにとだけ言ってさっさと行ってしまいましたし。

 異様に低い自己評価で、涙目パニック状態。敵であるタデウスに懇願までします。セリフのフォントまでも震えてかすれています。しかし、その内容は、「だからどうかお願いします」「死なないように頑張ってください」。

 枷やら鎖やらで拘束されたまま、土下座状態でこの強者の貫禄。いや、逆にこの異様さがあるからこその強者の貫禄でしょうか。

 そして、ピルルのキャラクターや、登場シーンとは別に衝撃的だったのが、その名前です。

 オマージュ元のキャラクターの口癖をそのまま名前に採用してしまう思い切りの良さには驚かされました。

 

 

 武器や服装が新しくなったエイリスですが、表情も以前よりも大人びたものが多くなりました。それから、まつ毛が長くなっている気がします。私の気のせいではないと思うのですが。

 今回は長くなったため感想その②へと続きます。

 

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