
メカニカル バディ ユニバース 1.0 (1) (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
タイトル:メカニカル バディ ユニバース 1.0
作者:加藤拓弐
年代:2023~
巻数:既刊5巻
あらすじ・概要
科学技術の進歩の果てとも言うべき様々な兵器が使用された大戦。その結果、環境は荒廃し、文明も衰退し、戦争が終わった今も静かに滅びへと向かっている世界。
かつての街の廃墟にコロニーを作り生活圏を確保し、強かに、懸命に生きる人々。
軍の管理下から解放され、それぞれの生き方を選んだAIたち。
野生化し人々を襲うモンスターと化したドローンに、未だに世界を脅かす脅威として存在し続ける自立型の兵器たち。
世界復興を掲げ活動する名家に大企業。
過去に起きた戦争の裏側、現在の世界の闇の中でも活動し続ける暗躍者たち。
そんな世界で描かれるのは、人と心を持った機械たちの絆。
加藤拓弐先生が、趣味でSNSに投稿していた『メカニカル バディ ユニバース』。商業誌連載版としてとんでもなくパワーアップしています。
SNS投稿版単行本の記事はこちら
連載版になって大幅にクオリティーアップ。
SNS投稿版単行本の記事でも書いたので簡単にまとめますが、文明衰退後の荒廃した世界を舞台にしたポストアポカリプスな感じのSFオムニバス作品で、人と、心を持った機械たちの絆が物語の中核になっています。
ただ、その世界観と、キャラクターの見せ方が凄いです。
どう凄いのかというと、作者が「こういうのが好き」というのが伝わってくると言いますか、伝わりすぎると言いますか。
リアリティーと浪漫を同時に感じさせるオリジナルのメカニックデザインも、人の隣人としての心を持った機械たちや、彼らとそれぞれの関わり方をする人間たちの描写も、それを取り巻く世界設定も、センスが光り輝いています。
本当に「こういうの」が好きな人にしか描けない漫画です。
さらに、重要なのが、今回商業誌連載版として、大幅にクオリティーアップ&ボリュームアップしている点。
メカのデザインセンスは元々輝いていましたが、連載版の細い線で細部まで書き込まれたメカ絵は本当に素晴らしい。
背景描写もすっきりわかりやすく、かつ緻密。読者がまだ知らない最終戦争後の世界の風景と、そこで生きる人々の営みを魅せてくれます。
単純な絵のクオリティーアップも素晴らしいことですが、上の2点は特に重要です。
未知の世界の魅力を伝え、そこにリアリティーを演出する上で、視覚から入ってくる情報をすんなり脳が受け付けるかはSF漫画においてとても大事な要素。その大事な部分がとんでもなくアップグレードされているわけですから。
そして、以前はSNS投稿故に、場面ごとの超短編をツギハギした形式だったので、物語としてはダイジェストのような印象も受けましたが、今回は商業誌連載漫画。
1話辺りのページ数も十分。ストーリー漫画として進行する物語も、キャラクターたちの関わり合いに、掛け合いもボリュームアップ。
よりじっくり丁寧に魅力的なキャラクターたちを表現。情感や、漫画的な演出や、アクションの迫力も全体的にパワーアップしています。
SNS投稿版のいい所・おいしい所はそのままに、SF漫画として大幅にパワーアップしています。
SNS投稿版とのつながり
この連載版は単純にSNS投稿版の続きというわけではない様です。
世界設定や、キャラクターの設定は基本的には同じ様なのですが、連載版で改めて1から描き直されている場面や、なかったことにされたエピソードも見受けられますので。※口裂け女とのっぺらぼうの出会いや、SNS投稿版でのレイニーとダリア組の出会い等。
SNS投稿版でその場面だけ切り抜く形で描かれたシチュエーションが、連載版のストーリーの一部として出てきたこともありました。
そのため、単純に考えて連載版はSNS投稿版の続きではありません。
その一方で、連載版では、バディとなる相手や、他のキャラクター同士の出会いや、その他一部ののエピソード等が「既に描かれた」ものとして扱われています。
結論として、この連載版はそれだけ読んでもストーリー漫画として成立するようになっていますが、特定のバディ結成時や、連載版では既に過去に起きたことになっているエピソードについてはSNS投稿版の単行本を読むことが前提になっている様です。
なかったことになったエピソードや、連載版でこれから描きなおされるエピソードもあるのが少しややこしいのですが、それらは、その都度ストーリーや、時系列との整合性で判断するしかないみたいです。
こんな人にオススメです。
- 良質なポストアポカリプスSF世界観を高品質な作画の漫画で楽しみたい人。
- 人とメカの絆や、心を獲得した機械というテーマが好きな人。
こんな人にはオススメできません。