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お姉さまと巨人(わたし) お嬢さまが異世界転生8巻 感想その①


お姉さまと巨人 お嬢さまが異世界転生 (8) (青騎士コミックス)

 

 魔族の王として、実妹の姉として、シスターフッドの姉妹として、自分の背負い続けてきた責任の板挟みになり、潰れそうなカルラ。そんなカルラに「私があなたのお姉さまになってあげる」と手を差し伸べるエイリス。

 『お姉さまと巨人 お嬢さまが異世界転生』8巻の感想です。

 

怪獣大決戦と書いてイチャイチャと読む感じのキャットファイト

 前巻ラストでのエイリスのカルラへの「私があなたのお姉さまになってあげる」発言で、ようやくかと思っていたのですよ。

 王都決戦の時に自分のことを「お姉さま」と呼んだカルラのことを『自意識カジョ―なんじゃないですか?』とエイリスがちゃかしてから4年。ようやく2人が『姉妹』になると。

 その一方で、4年前の件を根に持っているカルラがやりかえして、2人が怪獣大決戦(イチャイチャ)するのも見てみたいなと思っていました。

 まさか本当に実現するとは思っていませんでしたが。

 心のどこかで期待してはいましたが、ここまでの流れから絶対にそんな展開は来ないだろうなと思っていました。見事予想は大外れ。期待通り、いえ、期待以上のものが見られました。

 エイリスの告白を真っ向から拒否。ちゃかして台無しにするカルラ。

 前巻ラストで泣いていた時の目じりの涙もぬぐわぬまま、ギャグ調の顔で「あなたの『妹』になるつもりはありませんけど?」。

 この顔はエイリスがカルラの『お姉さま』呼びをちゃかした時の顔そっくりですね。 そこから、さりげなくひきつった顔を経て、ひきつった泣き笑い顔へと移行していくカルラ。

 さらに、エイリスの言葉を引用して「ひきつり笑いの極み涙のせ」みたいな顔で、かすれたフォントながら、大きな吹き出しで「自意識カジョ-なんじゃないですかぁ?」。

 カルラの言葉の合間のコマで「『ええ!?』『マジで!?』」みたいな顔や、「『うわあ』『言っちゃったよこの主』」みたいなリアクションをするカルラの僕、ガルーダとマン・イーター。

 そしてカルラの言葉の間は、ずっと目元を伏せられたまま、固まっていたかと思ったら、ページをめくったタイミングで赤面ぐるぐる涙目で「おんどれぇええ!!」と絶叫、逆上するエイリス。

 涙目ひきつり笑いに、赤面ぐるぐる目大絶叫と、2人ともとてもいい表情でしたね。

 「言ってやった!言ってやった!」「ようやく言えた・・・!」というカルラのセリフからして、カルラもエイリスの「お姉さまになってあげる」発言をずっと待っていたのですね。その上でやり返してやろうとずっと計画していたと。笑いました。

 この時点でもう十分に面白すぎたのですが、2人の怪獣大決戦(イチャイチャ)になれている街の人たちのリアクション、特に、2人よりも家の裏で喧嘩している猫が気になる子供へ、その母親が言った「発情期なんでしょ」「放っといてもう寝なさい」というセリフに止めを刺されました。

 猫同士の「キャットファイト」が隠喩するもの、「発情期」というキーワード、「放っといてもう寝なさい」の投げやり感。控えめに言って最高に笑えました。

 

VS真面目なカルラ。封印の意味する所

 キャットファイトが一段落すると同時に、魔族の王としての立場で、真面目にエイリスを殺しにかかるカルラ。

 そんなタイミングでヒナコから姉妹たちに、対巨神用マナ封印装置によってエイリスの魔法が封じられていることが告げられます。エイリスが『巨神』としての力を内包したまま現世で生きていくのに必要な処置だったのだとか。

 つまりエイリスは『巨神』としての力を失っていたと。カルラもこのことがわかっていた上で殺しに行ったと。

 しかし、カルラは本気で殺しにかかった上で、エイリスに敗北することになりました。

 エイリスとキャットファイトを繰り広げる仲であったカルラでさえも、単純な戦力低下と認識していた『巨神』の力の封印。

 エイリスのお姉さまであるヒナコと、4年前に『白き巨神』ではなく『エイリス』と戦って敗北していたウェンディだけが、エイリスの『白き巨神』の力を封印するということの本質的な部分に気が付いている展開が熱かったですね。

 対巨神用決戦生体兵器だったウェンディに勝っていますからエイリス。

 『白き巨神』としての力ではなく、その器となった人造巨人兵器『ガルガンチュア』としてでもなく、『エイリス』としてヒナコを守るために2年間で鍛え上げた地力で。

 そこからさらに4年。魔法が完全に使えないことが前提で、ヒナコだけではなく兄弟姉妹みんなを守るために鍛えに鍛えたエイリスが、今どんなことになっているのかという部分がぬけているわけですね。カルラその他のみなさんは。

 4年間の間に現実に打ちのめされてしまったのか、「『姉妹』の絆」という綺麗ごとを信じきれないと言うカルラ。「虚構では現実を打ち倒しはできない!」と言う彼女。

 それを「『白き巨人』の器に貼られたラベル」に例えられた虚構の巨人が、かつて信じられなかった「勇敢で義に厚く誇り高い巨人」という虚構の物語をヒナコの背中に見た妹が、「現実」から兄弟姉妹を守るために鍛え上げた今のエイリスが、カルラという妹のためにぶちかますという構図。

 現実という怪物そのものであるかのような黒い靄を纏った巨大な姿で迫るポセイドン。カルラの心に憑りつくもの・まとわりつくもののおどろおどろしさが可視化されているようで、それに真っ向からぶちかますエイリスが最高でした。

 

ヒナコがエイリスに与えた物

 カルラを救うため、戦争の最前線に魔族との交渉へ赴くエイリス。

 この場面、塹壕の中から兵士が見上げたエイリスや、防壁の亀裂から乗り込む彼女の横顔と魔族兵士が同時に映っているコマ等、色々なアングルで「巨大感」が楽しめましたね。相も変わらず素晴らしい表現力。

 この回は、魔族と交渉するエイリスと並行する形で、ヒナコとカルラによって、「同じテーブルで交渉できる『巨人』」というエイリスの異常性と、その異常性がどのような結果へ収束するのかということが、カルラによって語られました。

 王として、姉として、『姉妹』としての責任を果たすために行動していたカルラでしたが、暗躍していたのはエイリスのためでもあったわけですね。

 その身に宿す『白き巨神』とは関係なく、エイリス自身が、祀り上げられるような立場になりかけていると。

 苦悩する王として、その立場のつらさを知っていたからこそ、カルラはそれを阻止しようとしていたと。

 ヒナコも、カルラも、エイリスがそうなるのを止めようとしていましたが、エイリスはカルラを救うため進もうとしていると。

 止めようとした2人はともかく、一読者の私としては、ヒナコがかつてエイリスに与えたものが、確実に彼女の力になっているのが嬉しかったですね。

 王都でのウェンディ戦でも語られていたヒナコがエイリスに与えた物『誇りと礼節』。

 前者の「誇り」はエイリスがその「誇り」の本質に気が付くことで、壁を乗り越えて成長する描写があり、エイリスの力になっていました。

 一方で後半の「礼節(マナー)」の扱いに関しては、エイリスが人間のいろいろな戦闘技術に注目するきっかけだったり、ウェンディの隠し玉に気が付いた理由だったり、とどめのパイルバンカーを決める時の体幹だったりに採用されていました。

 ウェンディ戦は名バトルで、『誇りと礼節』を与えたヒナコとの絆も感じられる素晴らしい場面構成でしたが、それでも「礼節」の扱いについては、正直なところ、「こじつけぽいなあ」とも思ってもいました。

 こじつけはこじつけで面白かったですし、勝敗が決した後で、おしとやかにカーテシーを決めるエイリスもかわいかったのですけどね。

 今回、ヒナコが与えた「礼節」が正しい用法で使われているのを見て、なんだかすごくすっきりした気分になりました。

 

 

 カルラがすんなり妹にならなかった展開は予想外でしたが、いいものがいっぱい見られました。

 キャットファイト、VS真面目なカルラ戦、輝きが見えなくなってしまったカルラにエイリスがかけた言葉とその時のカルラの表情、エイリスの魔属領への「私が『お姉さま』だ」宣言、他にもいろいろ。

 今後の展開も予想していた以上に面白いことになりそうでわくわくします。

 

 

今回は長くなったため感想その②へと続きます。