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お姉さまと巨人(わたし) お嬢さまが異世界転生8巻 感想その②


お姉さまと巨人 お嬢さまが異世界転生 (8) (青騎士コミックス)

 

この記事は感想その②となっています。その①はこちらです。

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 28話の扉絵は、晴天を貫くかの如く聳え立つ世界樹のシルエットを背景に、両手の掌を広げるポーズのトルガナーナ。

 以前のおまけページで、トルガナーナの目的が「天国へ行くこと」であることは知っていたので、いろいろ意味深長に感じた一枚でした。

 トルガナーナにスポットライトがあたるのかなと思って読み始めたら、いろいろ度肝を抜かれました。

 『お姉さまと巨人(わたし) お嬢さまが異世界転生』8巻の感想その②です。

 

トルガナーナ回かと思ったら…

 印象的な扉絵から始まった28話。

 「このタイミングでトルガナーナにもスポットライトあたるのはいいな」とか、「宣戦布告を済ませたエイリスが本格的に動き出す前に、『姉妹』たち1人1人エピソードがあるのかな」とか、そんなことを考えながら読み始めたら、あっという間に話に引き込まれました。

 「機械やデータが天国へ行けるのか」や「宗教もアップデートが可能」といった話題の部分も、悩める人工知能であるトルガナーナの情緒が感じられる素敵な表現でしたが、その後はもっとすごかったですね。

 「『天国』というものの存在の手がかりは『異世界転生』現象にあるのではないか」から始まったトルガナーナの『異世界転生』現象についての考察。『魂』と『天国』とは何かという話。

 さらにそこから、彼女の仮説の合間に出てきた「この惑星の自転速度は秒速470m前後」、「公転速度およそ秒速30km程度」というまさかのキーワード。自分の知識に自信がなかったので思わず手を止めて地球の自転・公転速度をネットで調べてしまいました。

 さらに、さらに、そこから『天国』という『魂』にとっての保管場所が『惑星』の中にあるのならば『地獄』は何処にあるのか、古今東西の宗教で描写される『地獄』の条件に合う環境は『宇宙』であるという論理の展開。

 とても興味深い話の合間に、これまでの物語をひっくり返すかのような真実へのヒントが出てきて、かと思えば、さらに興味深い話へ。

 そして、まさかまさかの、即日、同エピソード中での答え合わせ。

 ヒナコとミミナシ卿の回想によって『異世界』がはるか未来の地球であったこと、この世界の成り立ち、異世界転生や、『チートコード』と『正規コード』とは何かといった物語の真実が明かされました。

 登場人物たちの情緒、感情の表現も素晴らしかったのですが、この回はとにかく、衝撃の真実といいますか、情報量で畳みかけてくる感じが凄かったですね。

 頭と感情を両方同時に揺さぶられる感覚が凄かったです。

 

異世界転生の真実

 ミミナシ卿とヒナコの会話の回想。時系列的には5巻・18話、ヒナコが祈りながら吉沢少年に『アンチ・チートコード』を突き立てた日の夜でしょうか。

 トルガナーナの仮説の答え合わせで、この世界の成り立ちを知る人物からのネタばらしでした。

 科学技術によって『魂』というものにまで手を伸ばした古代文明人=我々から見た未来の人類。

 しかし、地球の資源が枯渇し、氷河期が到来し、他にも様々なことがあって滅亡寸前へ。

 外宇宙まで居住可能な惑星を探しに行こうとするも、「内輪揉めで戦争をした(てをとりあってがんばった)」結果、タイムオーバー。

 絶滅回避のセカンドプランが『魂』を扱う技術によるはるか未来への転生であり、そのための装置が『地球』という名の魂の保管庫から個人を召喚する世界樹こと召喚機『ベルクソン・ツリー』。

 そして、はるか未来へ召喚された古代文明人は、数万年の間に別の進化を遂げて生き残っていた現生人類=魔族を資源として扱い、非道の限りを尽くし、『魂』を扱う技術で世界を遊びつくしたと。

 最終的に、自分たちの魂にも『チートコード』で手を加えた結果、『魂』の識別情報を書き換えた影響で『ベルクソン・ツリー』の基幹システムへアクセスできなくなってしまい、全身機械化による強引な延命の結果が『ハイ・エルフ(狂った長寿)』。

 転生者がランダムに召喚されるのは古代文明人たちが自分たちのゲームを盛り上げるために作った仕掛けに過ぎず、基幹システムへアクセスできる人間がいなくなった影響で止められなくなり、今も続いていると。

 魂への改造行為がシステムから弾かれるのは自然界でも同じで、『チートコード』を持つ者の魂は『天国(ちきゅう)』に戻れず、『地獄(うちゅう)』にはじき出されてしまうのだと。

 『魂』の流出が止まらず、このままでは世界が滅びると。

 情報の内容にも、量にも圧倒されました。

 これでもかと盛り上げる漫画表現も素敵でしたね。

 異質な、非人間的な表情で狂気を演出し、最後は不気味な笑顔のままのフェイスパーツを外し、無機質な素顔をさらし怪物感を出すミミナシ卿。

 「内輪揉めで戦争をした」に「てをとりあってがんばった」、「ハイ・エルフ」に「狂った長寿」とルビを振るセンス。

 そして、自分たちの魂がゲームの駒のように扱われていたことを知ったヒナコの怒り。彼女がまとう黒い何かと、怒りと一緒に吐露された別の感情、慟哭。

 そして、それまでの怪物然とした表情から一転して覚悟のある人間の表情をしたミミナシ卿からヒナコへ託される希望『アンチ・チートコード』。魂から『チートコード』をはがすことのできる装置。

 この場面、吉沢少年はヒナコの祈りもむなしく地獄へ落ちたのだと、すっかりミスリードされていたのもあって、自分の中で感情が凄い盛り上がり方をしました。

 少し冷静に吉沢少年の死因を考えれば、わかることだったはずなのですが、完全に漫画の勢いに飲まれていましたね。

 

 

 私は以前、『チートコード』は異世界召喚された人間の『正規コード』を封じるための仕掛けだと思っていたのですが、どうやら違ったようです。

 ニンゲンたちはかつて宇宙からこの地にやってきたオリジナル人類の数を補うための代替として、最初からアクセス権を持てないように作られた人工の奉仕種族で、オリジナルがいなくなった後に残されたシステムを使うために、自分たちの代わりにアクセスできる人間を呼び出そうとしたのが異世界召喚の始まりだったのではないか等と、いろいろ妄想していたのですが、全部ハズレでした。

 魔族が原生人類であるという説明や、宇宙船があるのだから星の外から来たのだろうと思わせるミスリードにまんまと騙されましたね。

 そんな感じの所で今回の答え合わせを読みました。

 完全に予想外の地点から推理が始まって、演出にも引き込まれて、救いのないくだらない異世界召喚の真相の話から、さらなる残酷な真実へ。

 これまでの残酷な物語から想像していた以上にグロテスクで救いのないこの世界の成り立ち。

 一方、ヒナコに介錯された吉沢少年は、ヒナコの祈りのとおりに『天国(ちきゅう)』へいけたのだと、還れたのだという救い。

 予想外の真相にびっくりするという意味でも、物語に引き込まれるという意味でも、圧倒されましたね。

 今回はまだ少しだけ気になることがあるため感想その③へ続きます。

 

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