コミックコーナーのモニュメント

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ここまで共感できない主人公も珍しい。※誉め言葉です:君が肉になっても レビュー

 

タイトル:君が肉になっても

  作者:とこみち

  年代:2020年

  巻数:全1巻

 

あらすじ・概要

 ある日、路地裏で、大きな肉塊の怪物が何かを食べている現場を目撃した須田ひな子。思わずスマホのカメラでパシャリ。

 彼女はひょんなことから、肉塊の正体が同じクラスの宮野真希であることに気付きます。

 ひな子に写真を見せられたことで、自分の見た「変な夢」が夢ではなかったことを知った真希。肉塊の怪物となった彼女が食べていたのは人間でした。

 真希を襲う理不尽な運命。崩壊する日常。それらに独特の感性と、のほほんとしたノリで立ち向かうひな子。

 ホラーコメディーであり、サスペンスであり、広義の意味では百合漫画とも呼べますが、これらの表現だけでは説明不足になってしまう独特の味のある漫画です。

 

恐るべきはひな子のキャラクター。そして、とこみち先生の構成力。

 この漫画は、ある日突然、人食いの怪物になってしまった少女の悲劇と、その少女を助けようとする少女の献身の物語なのですが、この表現だけでは語弊があります。

 いえ、間違ってはいないのですが、上の説明を読んだ人が想像したであろう物語のイメージと、実際の漫画の間に、かなり大きな溝があります。

 その原因が主人公であるひな子のキャラクター。発言も行動も控え目に言って「おかしい」の一言に尽きます。※何がどのようにおかしいのかはお察しください。

 ここまで主人公に共感できない漫画も珍しい気がしますが、これこそは作者・とこみち先生の確信犯。

 独特すぎる感性の持ち主であるひな子が真希の隣にいることで、本来もっと悲壮感に満たされた漫画になりそうな所が、異様にのほほんとしたコミカルなものになります。

 いえ、シリアスな場面も、悲しい場面も、切ない場面もあるのですが、そんな場面の最中ですら、ひな子に突っ込みを入れざるを得ないと言いましょうか。

 ほのぼの・のほほんとした印象の絵と、ひな子のキャラクターの組み合わせが、ホラー漫画らしからぬ独特過ぎる味を出しています。

 一応、公式の説明には「青春ホラー」と書かれていますが、純粋なホラー漫画というよりも、ホラーコメディー、もしくは、サスペンス百合とでも言うべき漫画です。※「百合」は友愛的な意味での百合です。

 所々シュールですが、ただシュールと言って終わらせることができない不思議な余韻の様なものがあり、ただサスペンスというにもコミカルすぎるという複雑怪奇。

 描き下ろしのおまけ漫画まで含めても160ページ程の短めの漫画ですが、この短さも含めて凄まじいまでの構成の巧みさが味わえました。

 最終話でのひな子の選択、最後の1コマのセリフ、余韻の抜けきらぬうちに読む描き下ろし漫画と、本当に最後の最後まで楽しめます。

 

こんな人にオススメです。

  • 一番大切な人のために、それ以外の全てを犠牲にする。そんな物語を読みたい人。
  • ただ悲しいだけではなく、ただ切ないだけでもない。シュールと言うだけでは説明不十分。そんな言語化不可能な魅力を実際に形にしてしまった漫画を読んでみたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 背筋が凍るような怖いホラー漫画が読みたい人。※正直ホラー漫画ではないのではと思いました。
  • 主人公目線で、主人公に共感して物語を楽しみたい人。