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魔女の下僕と魔王のツノ3巻 感想


魔女の下僕と魔王のツノ 3巻 (デジタル版ガンガンコミックス)

 

 元人間で現魔物である魔女の下僕アルセニオ。そのアルセニオと共に魔王討伐を目指すのは、望まずして女性の体になってしまった元少年のレイに、そのレイに求婚中の幼なじみのロイド、さらには極北の魔女であり、時々男で時々女のエリック。

 拗れる人間関係が面白い魔女の下僕と魔王のツノ3巻の感想です。

 

拗れに拗れる人間関係

 この漫画は、作品の紹介文で「ファンタジックラブコメディ」と紹介されている通り、ファンタジー要素が登場人物の人間関係を拗れさせています。

 魔女の魔法で少年から少女になってしまったレイをどう扱うかという問題が今までもあったわけですが、話が進むにつれてますますややこしくなってきました。

 魔王討伐チームに合流したエリックは時々男で時々女。

 元々は男性なのですが、心臓病で肺にも問題を抱えるエリックは、体つきや内臓の大きさの男女差に注目。

 試してみたところ、女性の体でいる時の方が、呼吸がすごく楽だったという理由で、割と頻繁に自身に女性化の魔法をかけています。

 本来の性別とは逆の性別で固定されてしまっているレイに比べれば、魔法を解除すれば良いだけに思えますが、そこで拗れるのがラブコメディー。

 アルセニオとエリック(女)が仲良さげにしているのを見たレイは焼餅を妬き、エリックと師弟関係にあるロイドも、エリックとアルセニオの関係が気になる模様。

 エリック本人にいたっては、自分の「妹」であるレイを一族の有望株であるロイドとくっつけるために、アルセニオを自分に引き付けようと誘惑までします。おまけにみんなの前で「交際を申し込んだ」と爆弾発言。

 拗れに拗れる人間関係もラブコメディーの醍醐味とはいえ、エリックの参入で一気に混沌としてきました。その拗れている部分が面白いのですが。

 アルセニオに自身の胸の中の嫉妬を打ち明けたものの、意図を盛大に取り違えられ、ロイドに変な八つ当たりをするレイもかわいかったです。

 

「エリックはただ…(女の体でエロ体験したいだけのど変態)」

 上のタイトルは、エリックがみんなの前で「交際を申し込んだ」と爆弾発言した時に、アルセニオが言おうとして言えなかったセリフ。「エリックはただ…」とまで言ったものの続きを言い淀んでしまいました。純粋な子供たちの前では言えませんよ。

 エリックはアルセニオに、女性化した自身の体に興味があるから検証に協力してほしいと持ち掛けていました。

 大真面目な顔で自身の胸元に手をかざし「例えば…異性にもまれると大きくなるという俗説は本当なのか」と切り出し、アルセニオに突っ込ませます。

 さらには、言いにくそうに言い淀んだかと思えば、恥じらいながらも好奇心で目をキラキラさせながら、「言いにくいんだが…性体験にも興味がある」とぶちまけます。

 アルセニオの突っ込みが止まらなかったのは言うまでもありません。

 後のエリックの言い分を信じるならば、これはレイとロイドをくっつけようとして、アルセニオを自分の方に引き付けるために誘惑したということですが、旺盛すぎる好奇心が暴走しがちなエリックの性格を考えると、全部が全部演技だったとも思えません。

 艶っぽくアルセニオに迫ったと思ったら、時に真顔で、時に恥じらいながら、爆弾発言を連発するエリックに大笑いしました。

 無防備でいろいろズレているレイと違い、自分の行動の結果を意図して誘惑しているわけですが、意図している部分とは別に、やっぱりズレている部分もあるというのが面白いです。

 

心が男でも女でも、愛する人が男でも女でも…

 2巻では性自認、つまり心の性別にまつわるやり取りがありましたが、今回は自分の性別をどう認識するかという問題と、同性が好きか、異性が好きかは別の問題という話が出てきました。語るのはやはりエリック。

 望まずして人間から魔物になったアルセニオもいるので、TS(性転換)に限らず、変身物語的な要素を中心に話が進むものと思っていたのですが、今のところ掘り下げられるのは心の性別や、性的指向などの性別に関係するテーマが中心のようです。

 レイの心が男か女か問題はまだ決着がついていませんが、自分は男だと主張すると同時にアルセニオに引かれてもいるレイの、目から鱗といった様子は綺麗に表現されていました。

 エリックの「お前の心が男でも女でも、愛する人が男で女でも、あらゆる知識をかき集めて、お前の全てを正当化してやる。心のままに生きなさい」は名台詞だと思います。

 綺麗なセリフの後にもオチがつくのが、この漫画の流儀の様ですが。

 

 

 魔王城攻略の方面の話でも、キレイなお姉さん好きのサソリ少女ブレンダが、エリック(女)をロックオンする等、全体的にエリックのエピソードが目立つ3巻でした。

 半分は意図的で、もう半分は天然で周囲を振り回す上に、受難体質でもあり、度々好奇心が暴走するエリックは見ていて飽きません。