魔女の下僕と魔王のツノ 13巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
表紙を最初に見た際に、魔王キングブルが団栗に見えてしまい、それ以降表紙を見るたびに団栗を連想してしまいます。魔女の下僕と魔王のツノ13巻の感想です。
注意
この記事は、『魔女の下僕と魔王のツノ』だけではなく、スピンオフ・前日譚である『教国のレクエルド』のネタバレも含みます。ご注意ください。
突然のサラのお引越しにびっくり
サウロとのデートも終わったにも拘らず、依然としてアルマのままのアルセニオ。まあ、その方が面白いのですが。
そんな彼女はついに魔法の導具を完成させますが、完成品を試した結果については「チッやっぱりサウロしか使えないか」と悪態をついています。ヒュペルボレアの職人の様な誰でも使える導具が作りたかったようです。※イスパニアの導具は信仰心が拠り所のためトノコ教徒専用。
冥王の毒針での性別変化は精神にも影響するとのことでしたが、女の時も、男の時も見せていなかった様な表情&悪態です。さらに、そのまま魔力切れでダウン。集中しすぎて食事も抜いていた模様。
男とか女とかよりも前に職人であるという感じですね。ベティと出会うより前の導具職人を目指していた頃の顔が出てきています。
そして、自分と向き合い、心を込めて剣を打った結果、次に完成した剣にはサラが宿りました。はい。アルセニオに取りついていたというか、宿っていたというか、ともかく彼の身体を魔物の身体にしていた精霊・サラマンダーのサラです。当然、アルセニオは人間に戻ります。
この展開には本当に驚きましたね。いえ、この漫画の設定的にも、これまでの話の流れ的にも、有りか無しかで言えば完全に有りなのですが、あまりに突然のお引越しでしたので。
完成した剣越しに見つめ合うアルマとサラの図が面白かったです。
11巻のビビアンの言からしても、素人のアルセニオがあれだけ魔王やら何やらと戦えていた点で見ても、サラはかなり強力な精霊ですよね。それが宿った剣は、もはや伝説になるレベルの武器なのではないでしょうか。
アルセニオが剣に込めた思いが「使うものが誰でも関係なく助けになってほしい」であったことに僅かばかりの不安も感じます。
偽らざるアルセニオの心ですが、解釈の仕方によっては敵対者でも使えるという意味にもなりかねません。
サウロの手紙、アルセニオの両親へ
前の巻でのサウロとアルマのデートの際に、アルセニオの両親に手紙を送るという話をしていました。
手紙を受け取った時の両親が、どのような反応をするのか楽しみにしていましたが、それがまさかこんなに早くかなうとは思いませんでした。4コマ漫画での登場だったのも予想外。
アルセニオのことで、あんなに老け込むぐらい心を砕いていたのに、思いのほか手紙への反応が軽かったですね。まあ、ある意味アルセニオの両親らしいですが。幸せそうで何よりです。
現在住んでいる場所が、魔女ビビアンの家であること等はぼかした様ですね。
第三者に手紙を見られる可能性や、両親の身の危険を考えれば、トノコ信教的にアウトな情報を伏せることは理解できるのですが、そうなるとどの程度のことを手紙に書いたのかが気になります。
今回はサウロの手紙でしたが、アルセニオも手紙を書くようなので、そちらのリアクションにも期待できますね。魔物になって失踪した後、生死不明だったアルセニオが元気にやっていること自体はもう伝わっているわけですが。
話は変わりますが、サウロの付き人だったヘマは、教国のレクエルドで登場した双子の片割れでしょうかね。
今更ですし、それを匂わせる様な伏線があったわけでもないのですが、彼女の髪の色や、現在の年齢を考えると当てはまるものがある気がします。
もしそうだったとすると、サウロの付き人になった経緯も想像できます。親を失った子供の面倒も見ているというアルセニオの両親がヘマのことをよく知っている風だったこともあり、なおのことありうるのではないかと思いました。※サウロの付き人だから交流があった可能性もありますが。
普通の人間の女の子・アルマの活躍
サラのお引越しで魔物の身体ではなくなり、普通の人間の女の子になってしまったアルマ。
彼女はサウロやレイに触れられた際に過剰に反応する人間の体に驚きます。別に魔物の体であるとか、人間の体であるとかは関係ないのではと思っていたら、検証大好き実験大好きなエリックが登場。
結局、体の感覚が敏感になっている理由についてはうやむやになりましたが、エリックが目をキラキラさせてエリックしている所が見られて満足しました。
今回アルマの活躍が目立ちましたね。
キングブルに寄生した魔物に襲われて、救出されるヒロインポジションを務め。
レイの執拗なまでに具体的なお触り宣言をとても面白かわいい反応をしつつ拒絶して。
母なる大地の化身のごとき構図でキングブルの夢の中に現れて、「母性とはおっぱいの大きさではなく、慈しむ心であること」、「この魔王城こそが私が求めていたママであった」といった真理に気付かせたりもしました。
しかし、一番驚いたのは76話、救出されるヒロインポジションを務めた翌日のサウロとのやり取りでしょうか。
アルマ、割と本気で女の子になる道も考えていたのですね。レイとサウロの間で揺れ動く心についてはこれまでも描かれてきたわけですが、その後の人生を女として生きるケースを割と本気で考えていたことにはかなり驚きました。
サウロの微笑とビビアンの微笑み?
箒に乗る練習を続けるも、中々上達しないベティ。乗馬と共通するものもあるかもしれないと、息抜きもかねてサウロが遠乗りに連れ出します。
遠乗り中に、危険を伴う魔王城での治療活動を続けるベティに、サウロが剣となることを改めて申し入れたりする一幕もありました。「アタシが大人になったらすごく悪い魔女になるかもしれないじゃない」というもしもの話をする彼女に、「その時は俺が斬る」と即答で返すサウロには笑いました。
いわゆる「道を踏み外しそうなら力づくでも求めてやる」的ないい感じの台詞ではなく、もっと冷ややかな別の何かですね。シンキングタイムゼロでの断定。迷いのなさすぎる宣言。
微笑するサウロの目が座っていたり、青空の背景に対して顔が絶妙に陰になっていたりと、今は矛先が未定でありながらも、冷たい殺意を感じさせる細かい表現と演出。驚きの表情のまま凍り付くベティの顔も含めて、とてもいい味が出ていました。
サウロとの遠乗りが切っ掛けで、箒に乗れるようになったベティ。
一日動き回ってヘトヘトの彼女を寝かしつけた後、アルマは眠ったままのビビアンにそんな彼女の話をするのでした。
アルセニオはきっと今までもこんな感じで世話をしながら語りかけていたのだろうなと思って見ていたら、ビビアンの口元が意味深長にクローズアップ。さらにその口元には意味深長な微笑み。
まさかビビアンのこれは寝たふりなのでは、「茨が伸びて来るワケのわからん病気」も自作自演なのではとの考えが頭をよぎり、この漫画の物語の始まりの部分をひっくり返すかの様な予感に驚愕。
しかし、よく見ると、クローズアップされた口元の主は、その時アルマに髪の手入れをされたばかりのビビアンとは、髪の流れ方が違います。体から伸びている茨の蔦の位置も違います。
ビビアンの口元のクローズアップと見せかけて、この1コマだけ別人でしょうか。ミスリードでしょうか。この微笑みの人が黒幕でしょうか。物凄くモヤモヤする1コマでした。
魔王城で盛大に執り行われたレイの誕生日パーティー。前の巻で伏線はありましたし、シルクハット型のツノ飾りを見て、「これの冠バージョンを作ればツノがなくなってもお洒落に隠せるな」等と考えていましたが、まさかこのタイミングでこれが来るとは思いませんでした。
レイがプレゼントの箱を開け、空気が変わった後もてっきりいつもの魔王みたいに途中で台無しになるものだと思っていたので、あのラストは衝撃的でした。