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お姉さまと巨人(わたし) お嬢さまが異世界転生4巻 感想その②


お姉さまと巨人 お嬢さまが異世界転生 (4) (青騎士コミックス)

 

感想その①はこちらです。

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 王城もとい、エンデバー号からの突然の砲撃。

 エイリスの中で目覚め始めた『白き巨神』。

 ジュンコ救出のため、羞恥顔のまま地下遺跡への穴に飛び込むカルラ。

 「お姉さまと巨人(わたし) お嬢様が異世界転生」4巻の感想その②です。

 

TMX-12トルガナーナと「オネエサマ」

 エイリスは王都の地下遺跡に落ちたヒナコ救出の時間を稼ぐために孤軍奮闘。かと思いきや、何やらエイリスの中で目覚め始めた『白き巨神』が魔法のサポートシステムか、ナビゲーションみたいになっていましたね。

 勝手に魔法を使うだけでしゃべったりはしないのですが、エイリスが使われた魔法から意をくみ取ったり、突っ込みを入れたりする反応が面白かったです。

 王都を巻き込んで砲撃してくるエンデバー号に向けて突撃するエイリスの描写は、相変わらずサイズ感の迫力やら、躍動感やらが凄かったです。

 なんとか取りついたものの、機械鎧をまとった巨人族・「オウメガ・ゴルム・ン・グバ」と、エンデバー号の迎撃設備を相手に、疲労困憊のまま戦うことになるエイリス。

 そこへ、エイリスと共に戦うためにエンデバー号の第七ハッチから出撃する巨大ロボット・トルガナーナ。コックピットにはヒナコの姿。あとカルラも。

 この展開は熱いですね。

 自身の信条ゆえにチートを受け取り拒否し、その結果、戦いでエイリスの役に立てないことを気にしていたヒナコ。

 自身の無力を自覚しつつも、それでもエイリスの姉として、たとえ足が折れても、地下遺跡を這って進み続けた彼女のあがきが、チートコードを拒否したが故の正規コードが、妹を助けるための力として結実するこの流れが最高に熱いです。

 ロボットに自分を「オネエサマ」と呼ばせるヒナコ。

 それだけ見たらギャグに見えかねないこのオネエサマ呼びも、「マスター」呼びを拒否する場面からの流れと、「これより戦闘行為を開始します『オネエサマ』」での初オネエサマ呼びの場面までの展開が綺麗で完璧でしたね。

 エンデバー号を制御していたはずのハイエルフの不意をつく形での「第七ハッチ」からの出撃は、某トップを狙う姉妹のSFロボットモノのオマージュですね。特徴的なBGMが脳内再生されました。

 

正規コードと空よりも上の何か。

 『白き巨神』についても気になりますが、それ以上に気になっていたのがヒナコの持つ「正規コード」。それがどのような意味を持つのかはずっと謎のままでした。

 この4巻で「正規コード」の意味が少しずつ明らかになってきましたね。

 古代文明の宇宙船エンデバー号を王城として使っている教会勢力。

 その中核と思われるハイエルフ・ブラザーフィロソマも、正規コード所持者のクローンと、チートコード持ちの転生者から奪った体のパーツを使った複数同時申請によって限定的に使うことができている古代文明のシステム。

 「正規コード」とはつまりはそのシステムへの正規のアクセス権と使用権ですね。

 ヒナコは王都地下の古代遺跡に眠っていたトルガナーナを再起動し、よりにもよってエンデバー号のハッチから出てきました。不正な手段を積み重ねても限定的にしか使えない異世界人勢力との差は歴然です。

 どうやらこの世界の「ニンゲン」にはシステム使用権はない模様。

 だとすると、「人間」ではなく、わざわざカタカナで「ニンゲン」と表現している点がすごく気になってきます。

 教会勢力はチート転生者を狩ったり、利用したりしていますが、彼らがチート転生者を召喚しているわけでもなさそうなのですよね。もしそうなら、自分たちの目の前に召喚して乱獲できそうなものですし。

 だとすると、「正規コード」を持つ転生者にわざわざ「チートコード」を埋め込んでいる存在の意図がますます気になりますね。

 私はてっきり、異世界人を戦力として利用するために作られたシステムだと考えていたのですが、それだけではなく、もっとややこしい背景がありそうです。

 そして、正規コードの意味が明らかになると気になってくるのが、3巻でのとある演出。

 ジュンコの言葉に、ヒナコが激昂した場面です。

 ヒナコの影が巨大な何かになる演出はこれまでも何度かありましたが、この日は日蝕

 ヒナコの片目がヒナコの顔から飛び出して日蝕と重なるというともすれば前衛芸術か何かの様な表現の印象が強烈でした。

 この表現に意味があったのなら、いったい月にあるのは「何」なのですかね。あるいは太陽との間に日蝕を起こすような他の巨大な何かがあるのでしょうか。

 ヒナコは転生直後にチートコードを拒否し、その場から退出する際に「コード」を確認されています。この時から古代文明のシステムがヒナコの存在を認知していたのなら、ヒナコの激情に反応したものはいったい何なのでしょうね。

 謎が解けるたびに新しい謎が出てくるこの感じ。この漫画のワクワク感。控えめに言って大好きですね。

 

おまけページの情報にもワクワク:「おしえて!ヒナコ先生!」

 この漫画は単行本のおまけ漫画の「幕間」が衝撃的な内容だったり、あとがきにさりげなく重要情報が載っていたりするのが面白いですね。

 1巻、3巻、4巻の幕間はどれも面白く、ページ数の割にインパクトが凄かったです。

 幕間がなかった2巻もあとがきにいろいろ面白いことが載っていました。

 それを読んでいなくても、物語の大筋の流れには問題がないのですが、読んでいるとまた違った見え方になる場面が多く、この辺りが絶妙な調整です。

 この4巻の12話、ヒナコが自分とお揃いのロザリオを未だ持っていることを見せつけられて、一瞬打ちひしがれたかの様な表情をするジュンコ。

 すぐに悪人顔に戻って「とっくに捨てたわよ」と言っていますが、次のコマでは表情が隠れていて何だか思わせぶりな場面です。

 2巻のあとがきを読んでいると、彼女の装備に「揃いのロザリオ」があるので、これが虚勢から出た嘘だとはっきりわかります。

 この巻の巻末にある幕間『一週目』に至ってはジュンコの本心まで吐露されていますからね。

 今回のあとがきは「おしえて!ヒナコ先生!」と銘打って教育番組風に先生のヒナコと、マスコットパペットのエイリス。

 その上で内容は、ゲームのフラグ管理の説明をする様に「ジュンコ生存フラグ」の条件を説明しているのが面白かったですね。「姉ポイント」や「妹ポイント」が関連する項目が多すぎます。

 本編でジュンコ自身が「無理ゲー」と評し、読者も無理ゲーだと思っていた「ジュンコお姉さま勝利ルート」が存在していたり、しかし、それはジュンコがジュンコであるが故にたどり着けないルートでもあったり。

 私が気になったのは「ジュンコ生存フラグ」の条件の中で、唯一名前が黒塗りの伏字になっていた人物の「妹ポイント」についてです。

 この条件下で名前が伏字になりそうな人物は1人しか思いつかないのですが、それだと「妹」ポイントなのがおかしいのですよね。

 まさかくるのでしょうか。「あれ」が。「あの展開」が。

 1巻のあとがきにあったBe-con先生の好きなジャンル・好きな要素リストにはありませんでしたが、私好みの展開が来るのではないかとワクワクしています。

 

 

 この漫画、毎回テンポがいいなと思って読んできましたが、セーブポイントの衝撃、ジュンコとの再会、ウェンディ及びジュンコとの戦い、そしてエイリスと白き巨神の関係の謎と来て、ヒナコの正規コードにまさかのロボと、王都についてからノンストップで畳みかけてきています。

 ジュンコの背景や、ヒナコへの想いが本物であることがわかり、ヒナコとジュンコの過去の物語とこれからの物語への期待も高まり続けています。

 続きが楽しみです。異世界の謎や事情全般に、ヒナコとジュンコの物語、白き巨神とエイリスの関係がどのような形で落ち着くのか、正規コードで何がどこまでできるのか。妹はどこまで増えるのか、この漫画は気になることが多すぎます。