お姉さまと巨人 お嬢さまが異世界転生 (3) (青騎士コミックス)
感想その①はこちらです。
第11話の百合の花が咲き誇る相関図の扉絵に笑いました。
全員一緒の「ないしょ」のポーズで1人だけ余裕のない表情のカルラと、悪役なのに悪ノリするジュンコ。この時点で面白いです。
百合の花で飾られた相関図なのに、矢印で示す関係性に「ブッ殺す」がいくつもあるのでもう駄目でした。
『お姉さまと巨人(わたし) お嬢さまが異世界転生』3巻の感想その②です。
絶対に相容れない姉妹
エイリスとウェンディが闘う最中、ジュンコと対峙するヒナコ。
ジュンコのキャラクターですが、中々のクズっぷりです。
悪役にも色々いますが、宿敵や、敵役の役所だと、ここまでわかりやすいクズは中々いないのではないでしょうか。
ヒナコは「あなたは自分の『悪』から目を逸らすために自分の目に映るすべてのモノを『悪』にします」と言っていますが、自分の悪を周りの人間や社会のせいだと責任転嫁する人間ですね。
悪役としては薄っぺらいのですが、その薄っぺらい部分も含めて彼女の人物描写がしっかりしているのがとても良かったです。
薄ら笑いを浮かべながらヒナコを言いくるめようとしていましたが、真っすぐブレないヒナコの態度に段々無表情に。
会話が進みヒナコがジュンコへの思いを吐露すると、悔しさと、それ以外の感情も感じさせるとても味のある表情を見せました。
ヒナコの言葉でこんな表情をするなんて、相当ヒナコに執着していますね。
今のジュンコはどうしようもないクズですが、彼女がこうなるに至ったドラマがまだ隠されている気がします。そう思わせられるそういう味のある表情でした。
そこからは感情的になり、ヒナコの言っていた通りの他者批判と、責任転嫁と、自己正当化。
ただ、見苦しい罵詈雑言の所々で、やはり、ヒナコへ向ける強い感情が感じられます。
そして、エイリスとの関係を侮辱されて、ヒナコが激高する場面。
ヒナコに執着していても、その価値観や性格への理解が足りず、彼女とエイリスの関係を測り違えるばかりか、彼女の激昂を予想できなかったジュンコ。
セーブポイントのタイムリープでやり直しになる前の世界でのジュンコの侮辱の様子や、その言葉にエイリスが傷つく様子とその心の内をまるで見てきたかのように語るヒナコとの「お姉さま」としての器の差は歴然ですね。
ジュンコがヒナコに執着する一方で、彼女自身のその人間性ゆえに、ヒナコと同じ目線で世界を見ることができないことがよくわかります。
かつてジュンコを殺す決断をした経験からか、それとも、エイリスの姉としての矜持からか、ヒナコの方も、元の世界にいた頃とは覚悟が違いますからね。
ジュンコのヒナコへの執着を見るに、元の世界でヒナコとの姉妹関係を解消しようとしたことにも理由がありそうですが、今の2人が絶対に相容れないことだけは間違いありません。
ヒナコの力とタイムリープの謎。
今までに何度かヒナコが見せてきた「影の巨人」のような何か。
これまでの描写では、ヒナコの気迫に飲まれた相手側の錯覚や、読者に向けた漫画的な演出である様にも見えなくはありませんでした。
ただ、今回は、とてもそういうものには見えませんでしたね。相変わらず、「それ」を見たのは、ヒナコと対峙しているジュンコだけだった様子でしたが。
この何かの正体も気になりますが、今回気になったのは、何回もタイムリープしているジュンコがそれを始めて見た様子だった点です。
ジュンコは、ヒナコの分も合わせて取った2つのチートの取り合わせが余程良いのか、ウェンディ相手に勝利するほどの実力者です。
そのジュンコが何回も死に戻りのタイムリープをしているということなので、エイリスだけでなく、てっきりこのヒナコの力も絡んでいるものだと思っていました。
ところが、エイリスが巨神であることを知っていたジュンコも、ヒナコのこの力を目にするのは「今回」が初めての様子。
では、何故ジュンコはタイムリープを繰り返しているのでしょうか。
ジュンコが悪人であるのは間違いないのですが、ヒナコにただならぬ執着をしている様なので、この辺りがポイントでしょうか。
ヒナコとエイリスの関係を侮辱した件で、前のループでエイリスにそれを言ったのかというヒナコの問いに「どうだったかしら」とぼかした辺りも不自然なのですよね。
前のループでやっていたら、それこそヒナコの激昂を予想できなかったのはおかしい気もしますし。
そもそも、死に戻りの能力の細かい仕様がわかりませんからね。
「セーブポイント」がそこまで有用なものなら、ハイエルフは手放さないでしょうからタイムリープにも何がしかの縛りがある可能性が考えられます。
色々と引っかかる点が多いからこそ続きがとても気になります。
おまけマンガは、敵側幹部たちの思わせぶりな登場シーン。
しかもその中には、エイリスの探すゴルム氏族の1人の姿も。エイリスが虐待されていた場面や、崖から突き落とされる場面でも同じ髪型の人がいますね。
ダスメイニア王「ジェームズ・クックルーⅧ世」と呼ばれる脳味噌も登場しましたね。この王様がⅧ世で、並んでいる脳味噌の数も八。
歴代の王様が脳だけの状態で延命されている感じでしょうか。
だとしたら、「セーブポイント」にされてしまった吉沢少年にも、まだ助かる見込みがあるかもしれませんね。
SF的に考えて、脳味噌だけで延命しているのなら、機械的なものにしろ、生っぽいものにしろ、「そういう備え」があってもおかしくないでしょうし。
なんとかなりませんかね。