タイトル:ゴブリンスレイヤー
作者:(漫画)黒瀬浩介(原作)蝸牛くも(キャラクター原案)神奈月昇
年代:2016年~
巻数:既刊14巻+外伝作品多数
あらすじ・概要
最弱の魔物・ゴブリン。
人間の子供と同程度の力と知性を持ち、集団で村を襲う、女を攫うなどの被害をもたらすものの、単体での脅威度は低く、少数ならば村の力自慢程度でも撃退可能。
そのため、侮られることも多く、大抵の冒険者はゴブリン退治を新人の仕事と考えています。
しかし、ゴブリンは夜目が利き、悪知恵も働き、さらには通常のゴブリンよりも強力な個体が群れに紛れている場合などもあり、新人冒険者が奇襲にあったり、罠にはめられたり、想定外の強敵との遭遇で全滅することも多いのです。
ドラゴンや、悪魔といったより大きな脅威への対処を優先し、国は動かず、熟練の冒険者にとってもゴブリン退治は報酬が安く「割に合わない」仕事です。
そんな中で、ゴブリンだけをただひたすらに狩り続ける男がいました。
ハイファンタジー世界の裏側にあるダークファンタジーな世界の中で、ゴブリンとの終わりのない戦いに明け暮れる不屈の男の物語です。
練り上げられた「ゴブリンスレイヤー」というキャラクターの魅力
光と闇、秩序と混沌の勢力が争ういわゆる「剣と魔法」のハイファンタジーな世界が舞台となりますが、物語としては完全にダークファンタジーよりの作品です。
凄腕冒険者が活躍したり、勇者が世界を救ったりする花形の物語の舞台裏で、ただひたすらにゴブリン退治をする主人公「ゴブリンスレイヤー」。
彼はゴブリンによって故郷と家族を奪われた復讐者。
常に油断なく行動し、決してゴブリンを侮ることをせず、ゴブリンを殺す方法をひたすらに考え続け、現実的で徹底的な手段でゴブリンを狩り続けます。
迫力のある戦闘描写と、現実的かつ、読者の想像の斜め上を行くゴブリンスレイヤーの戦い方は見応えがあります。
復讐劇は、復讐の対象を倒す・殺す・破滅させる・決着をつける等によって終わりますが、彼の復讐の対象はゴブリンという種族そのもの。
ゴブリンは非常に繁殖力が強く、さらには別の世界・天体からやってくるかのような描写もあり、現実的に根絶は不可能。つまり彼の復讐には終わりがありません。それがわかっていても、彼は今日もゴブリン退治に明け暮れます。
現実主義者である一方で、ゴブリンへの尽きない怒りと、果てなき殺意に取りつかれた復讐者でもあり、不器用なりに筋を通そうとする人間的な魅力もあるゴブリンスレイヤー。
そんな彼が、少しずつ他者と関わり、更生していく物語でもあります。
ゴブリンスレイヤーの人物像は単純明快な様でとても深く練られていて、彼の行動や発言の意味・背景をより深く考えることで、改めて気付けることがいろいろとありました。
噛みしめるほどに味わいの出るキャラクターになっています。
この漫画は、同タイトルの小説のコミカライズ作品ですが、ファンタジー世界観の伝わってくる背景に、わかりやすくも迫力ある戦闘描写、何よりも、ゴブリンスレイヤーというキャラクターの凄みがしっかりと表現されています。
原作者×漫画家のベストマッチという意味で、私が知る限り一番のコミカライズ作品です。
TRPG(テーブル・トーク・ロール・プレイング・ゲーム)に詳しい人がニヤリとできるネタや、思わずツッコミたくなる要素が含まれていますが、知らない人でも問題なく楽しめます。
注意点は残酷描写が多い点です。
人間をはじめとする知的種族を痛めつけて弄ぶことを楽しみとし、多種族の女性の身体を使って殖えるというゴブリンの生態に加え、一応人型の生き物であるゴブリンが次々にバラバラになるといった描写もあるので、残酷描写が苦手な人は読むのがつらいかもしれません。
こんな人にオススメです。
こんな人にはオススメできません。
- 人間の汚い部分・醜い部分だけを煮詰めたかのようなゴブリンを見るのが、気持ち悪くて嫌な人。
- 血しぶきが飛び散る、性的な凌辱、生き物がバラバラになる等の残酷描写が苦手な人。