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圧倒的な臨場感で物語に引き込まれる : 魔法はつづく レビュー


魔法はつづく (リイドカフェコミックス)

 

タイトル:魔法はつづく

  作者:オガツカヅオ

  年代:2018年

  巻数:全1巻

 

あらすじ・概要

 ホラー漫画家のオガツカヅオ先生の短編集です。短編10話+おまけマンガ。20ページから30ページくらいの作品の割合が多めです。

 柔らかさと温かみのある人物画と、物の質感が伝わってくるような緻密な背景美術で、不思議な話、怖い話、切ない話などが描かれます。

 大どんでん返しをしたり、二転三転をしたりと、何処に着地するかわからない読者を徹底的に振舞わす物語が魅力的です。

 

圧倒的な臨場感と、読者を振り回す物語

 オガツカヅオ先生の漫画の特徴としてまず挙げたいのは、その場所の空気が伝わってくるような臨場感です。

 木の床や本棚の木目を始めとして、建物の床や壁の建材や、作中に登場する小道具的なものまでも、とてもリアルな質感が表現されています。

 リアルな質感に加えて、様々なアングルでのその場所の描写や、単純なコントラストの濃淡だけではない光と影の描写、それに音についての漫画表現なども、いくつも使い分けられています。

 そうしたものが積み重なって、まるでその場所の空気の匂いや、温度までもが伝わってくるような臨場感が出来上がるのです。

 そうして読者を漫画の世界に引きずりこんだ後、徹底的に振り回します。

 短編形式の短い物語の中で、大どんでん返しがあったり、30ページに満たない物語の中で話が二転三転することもあったりと、振り回されるのが癖になります。

 ホラー系の話が多いですが、そこまで怖くはありません。怖いというよりも気味が悪いという感じでしょうか。

 物語を構成するものを私なりの言葉で挙げるなら「不思議・不気味・不穏・切ない・悲しい・愛」と言ったところでしょうか。「百合」を含むものもありました。

 怪談系も、そうでない話も、読後に何かしらの余韻の残る話ばかりです。

 じっくりと腰を据えて漫画を読める人、物語性よりも漫画家の作る世界観を楽しみたい人であるならば、ホラー好きでない方にも自信を持ってお勧めできます。

 

こんな人にオススメです。

  • 独特の読み心地の漫画や、癖のある漫画が大好きな人。
  • 大どんでん返しや、二転三転する物語に振り回されたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • ホラーにとにかく恐怖を求めている人。ただひたすらに怖い話が読みたい人。
  • 流し読み、読み飛ばしをする人。じっくり落ち着いてマンガを読めない人。