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真実が虚構になり、虚構は真実へと変わる : 虚構推理 レビュー

 

タイトル:虚構推理

  作者:(漫画)片瀬茶柴、(原作)城平京

  年代:2015年~

  巻数:既刊22巻

 

あらすじ・概要

 通院先の病院で2年越しの片思いをする少女・岩永琴子。

 長期入院する従姉の元に見舞いに通う青年・桜川九郎。

 2人の共通点は、妖怪や、幽霊や、妖などと呼ばれる「怪異」に纏わるものに縁があること。

 腹黒く、強かで、少し残念なお嬢様と、常識人の様でいろいろとズレている青年のコンビが、怪異にまつわる事件に挑む、少し変わった形のミステリーです。

 

 

ミステリーに「犯人はお前だ!」は必要か?

 この物語は、妖怪や都市伝説といった怪異の存在が前提で、ミステリーとしてだけではなく、怪奇モノとしての側面があります。

 その上、探偵役は犯人の特定や、真相の究明についてまっとうに推理するよりも、とんでもない方法でショートカットをしたり、嘘八百や口先の理屈で言いくるめることで事件の解決を図ったりもするので、ミステリーとしてはかなり変則的です。

 しかし、怪異の世界についての説明や、それぞれの事件でパズルのピースとなる事実については細かいところまでしっかりと説明されるため、論理的に頭を働かせながら読むのに十分な情報が提供されます。

 犯人は誰か、どのようなトリックで犯行に及んだのかという「1つの正解」のためだけに頭を働かせるミステリーではありません。

 「○○は××だった。××は△△とも言える。なら△△で○○を解決できるのではないか」、あるいは、「真相は○○が××だったのだが、○○が△△と考える方が依頼人は納得できるのではないか」といった様な、論理的に理屈を捏ねながら、事件の解決方法・「落とし所」を考えるエピソードが多いです。

 事件の真相解明、つまり「1つの正解」が求められるようなエピソードでも、こんな考え方も出来る、あるいはこうだったのかもしれない、真相はこうだけれどこういう説明でも筋は通ると、いろいろな可能性が言及されます。

 真相解明型のミステリーを完成形の1つしかないジグソーパズルに例えるなら、この作品は、様々な形のブロックが枠の中に綺麗に収まりさえすれば良いというルールの知育パズルでしょうか。

 あれこれと理屈を捏ねながら頭を働かせること自体が好きな人にオススメです。

 探偵役である岩永琴子や、助手の桜川九郎をはじめ、いろいろな意味で癖の強い登場人物が多いので、ミステリー以外の部分も賑やかで楽しいです。変人同士の恋愛の様子や、夫婦漫才染みたコメディーパートが楽しめます。

 1巻から6巻までが原作小説『虚構推理』と同じ、都市伝説・鋼人七瀬を巡る物語。それ以降は続編である別のエピソードとなっています。

 

こんな人にオススメです。

  • 状況や、証拠から1つの正解にたどり着くよりも、理屈を捏ねて、秩序だった論理を働かせること自体にミステリーの趣を感じる人。
  • 嘘つきで残念なお嬢様と、大人しそうでいろいろズレている青年の恋愛模様(8割方コメディ―)を楽しみたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • まず事件が起こり、状況や証拠からトリックを推理して犯人を絞り込み、ただ1つの正解に当てはまるかどうかというスタイルのミステリーが読みたい人。
  • 文字情報が多い漫画が苦手な人。事件に関する情報、解決編で捏ね回される理屈、とにかく話が細かいので、理解するためにはしっかりと読む必要があります。