コミックコーナーのモニュメント

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激務の中の悲喜こもごも「警察官のお仕事」暴露コメディー : ハコヅメ~交番女子の逆襲~ レビュー

 

タイトル:ハコヅメ~交番女子の逆襲~

  作者:泰三子

  年代:2018年~

  巻数:既刊23巻(+1巻※別章)※23巻で第1部完結

 

あらすじ・概要

 岡島県警町山警察署管内、町山交番勤務の新米女性警察官・川合麻衣。

 激務の上に嫌われ役。そんな警察官の仕事が嫌になった彼女は辞表をしたためますが、それをたたきつけようと思った当日に、元刑事課のエース・藤聖子が彼女の指導員に。ここから物語は始まります。

 藤巡査部長の指導の元、順調に警察官として成長していく川合巡査。

 あるいは、順調に警察という組織に染まっていく川合巡査。

 元警察官である泰三子(やすみこ)先生が贈る社会派でリアルなお仕事漫画。

同時に、コメディーとしても一級品です。笑えます。

 

リアリティーのある社会派漫画と、笑えるコメディーの恐るべき両立。

 フィクションで扱われることの多い「刑事」以外にも、警察の職種、業務はいろいろとあります。

 この漫画の主人公は交番に勤務する女性警察官で、刑事ではありません。

 では、この漫画は交番に持ち込まれた事件や、交番での日常が描かれているのかと言うと、そのとおりなのですが、それだけでもありません。

 この漫画で描かれているのは、架空の警察署である、しかし日本のどの辺りにあるのかは想像できそうな「岡島県警町山警察署」管内での「警察官のお仕事」全般です。稀に管外へ出張したり、警察学校時代のエピソードが登場したりもします。

 警察署のいろいろな部署の仕事風景や、多岐にわたる業務、様々な事案、日常の一コマに、訓練の様子、特別捜査本部立ち上げや、とにかく忙しい時の地獄絵図、激務の中の悲喜こもごも、さらには、超がつく男組織での女性警察官の苦労まで赤裸々に描かれています。

 この漫画はそんな社会派のお仕事漫画です。しかし、これだけの説明ではまだ不十分。

 そう、この漫画が凄いのは、それらのネタで面白おかしく盛大に笑わせてくれる所です。

 社会派のリアリティーのあるお仕事漫画と、娯楽系のコメディーとしての両方の面白さを恐るべき高水準で両立しています。

 とても笑えないような事件や、シリアスな展開も時にありますが、それはそれで警察官のリアル。それに、だいたいは笑えます。

 登場人物のキャラクター表現も、シリアスな場面での人間描写と、ダメな部分を晒してネタにしていくコメディーとしての面白さのバランス調整が絶妙。

 回が進むごとに人間関係や、その背景が段々と明らかになっていくことで、読者にも登場人物どころか、署内・管内への愛着が湧いてきます。

 作者である泰三子先生は約10年勤務した元警察官であり、警察の仕事を知ってもらいたくてこの漫画を描いたそうです。漫画家になりたくて警察ネタの漫画を描いたのではなく、警察の仕事を知ってもらいたくて漫画家になった方です。

 それで実際にここまで面白い漫画を描いてしまうとは、その熱意と勤勉さに感服します。

 社会派のリアリティーと、娯楽漫画としての面白さを両立し、単話の話は実際のページ数よりも多く感じる濃さにお得感を覚え、長編でも中弛みしない構成力と調整力が素晴らしい。本当にお勧めです。

 

 

こんな人にオススメです。

  • ドラマ等で誇張されたものよりもリアルな警察官の実際の仕事内容に興味がある人。
  • とにかく笑いたい人。忙しさを笑い飛ばしたい人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 刑事ドラマ的な警察官像に夢を持っていたい人。
  • 笑い話にもできないくらいにブラック労働、体育会系の組織が嫌いな人。