タイトル:江戸前エルフ
作者:樋口彰彦
年代:2019年~
巻数:既刊10巻
あらすじ・概要
江戸時代より400年以上の歴史を刻む高耳神社(たかみみじんじゃ)に祀られているのは、異世界より召喚された不老不死のエルフ・高耳毘売命(タカミミヒメノミコト)ことエルダ。
今ではすっかり引きこもりになってしまった御祭神エルフと、15代目の巫女に就任した高校生の小糸の日常をコミカル多めに、たまに、しんみりとした空気も挟みつつお届けします。
江戸の歴史・文化・風俗のネタも豊富な、だらだらまったり系日常コメディー。
江戸時代の生き字引のエルフの現代生活事情
この漫画の特徴として綺麗な絵と、大きなコマですっきり読みやすいことがまず挙げられます。
背景も、人物も綺麗に描かれていて、1ページ辺りのコマ数は少な目で、大きなコマが多く、とてもすっきりと見やすくて、読みやすい画面の漫画です。
1話をさらに3つずつの小エピソードに切り分けた形式をとることがほとんどで、読みやすい画面構成も合わせて、スマホで隙間時間に楽しむことにも向いています。
話の展開や、ギャグも分かりやすさ重視。捻ったギャグや、大笑いできるほど面白いものは少ない一方で、笑い所がわからない様な事もありません。
綺麗な絵を活用して、絵面のインパクトや、勢いで笑わせてくることもあります。
大笑いできるギャグ漫画というよりは、ただただ楽しい日常コメディーという感じですね。
異世界から日本へ召喚されてきたエルフという題材ですが、単なる逆異世界召喚モノではありません。
異世界から現代社会へ召喚されてくるパターンだと、洗練された現代の娯楽や、文明の利器に驚き、慌てふためきいいリアクションをしてくれるパターンのものが多いですが、彼女が召喚されたのは江戸時代よりも昔の時代。
慌てふためくどころか、江戸、明治、大正、昭和、平成と、文明の発展と、時代の移り変わりを見届けてきた生き字引です。
江戸時代を丸ごと体験してきた彼女による当時の文化や、風俗に関する蘊蓄は、この漫画の最大の見どころでしょう。
かなりの高頻度でマニアックな蘊蓄が挟まれますが、1つの説明で長々と話を引っ張ったりはしないので、すっきりと楽しめます。
懐かしそうに語られることもあれば、当時のエルダのやらかしエピソード等で綺麗にオチがつくこともあり、まさしく思い出話のように語れるのが楽しいです。
高耳毘売命(タカミミヒメノミコト)ことエルダリエ・イルマ・ファノメネル(621歳)
高耳神社で祀られている御祭神にして、異世界から召喚された不老不死のエルフ。
ゲームや、アニメ、漫画を愛するオタクで、プラモデルや、食玩の収集にも目がありません。
いろいろあって、すっかりコミュ障の引きこもりになってしまったものの、地域の皆さんには愛されています。
何処か共感できてしまう人間的な弱さと、人間ではたどり着けない永遠の命を生きる者の視座を持ち合わせています。
ノートパソコンを使いこなし、ゲームや、アニメや、ホビーのトレンド情報は最新。
30歳~40歳代の人に懐かしい玩具や、家電製品が押し入れから出てくることもあります。
長身の美形エルフながら、運動不足でコミュ障のため、姿勢や表情が何処となく残念なことになっていますが、それもまた魅力。
美形のエルフが厳かなデザインの神御衣を着て、お馬鹿なことをやっているとそれだけで面白かったりするのもずるいですね。
不老不死であるが故の周りとの生きる時間の違いや、移ろい変わっていく時代に置いて行かれることへの不安や恐怖を感じている彼女。
そのことで、しんみりとさせられる空気を纏うこともありますが、シリアスな時間が長く続かないこともこの漫画のいい所だと思います。
巫女の小糸とも名コンビ。
片や代々の巫女を見守ってきた御祭神エルフ、片や跡を継いだばかりの新人巫女。しかし、2人の関係はまるで友達の様で、見ていて和みます。
こんな人にオススメです。
- 絵が綺麗な読みやすい漫画、肩の力を抜いて楽しめるコメディーを読みたい人。
- 江戸の文化風俗の蘊蓄に興味がある人。
こんな人にはオススメできません。
- 江戸時代の文化風俗歴史トリビアに興味がない人。
- とにかく大笑いしたい人。