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令和のダラさん3巻 感想その②


令和のダラさん 3 (MFC)

 

感想その①はこちらです。

www.iiisibumi.com

 

 

 おどろおどろしい過去編と、紙芝居で語られる屋跨斑誕生の温度差。

 ダラさんが警戒する大妖・谷跨斑と、周に取りつく谷跨斑の現状。

 いろいろなギャップが面白い『令和のダラさん』3巻の感想その②です。

 

紙芝居完成と谷跨斑の現状

 薫に請われてダラさんが制作していた紙芝居が遂に完成。文字が隠れていますが、見えている部分から推察するにタイトルは「屋跨斑の誕生」でしょうか。

 いろいろ突っ込みどころの多い紙芝居ですが、最大の突っ込みどころはダラさんの画力の成長速度です。

 妹巫女(後のダラさん)が谷跨斑の首を落とす瞬間など、妙に躍動感のある絵が描かれています。

 自分の画力に腕三本掛かりで頭を抱えていたのがついこの間のはずですが、短期間にここまでの絵が描けるようになってしまうダラさんのセンスと努力が凄まじいです。

 そして、薫が紙芝居を要求した場面などを読み返していて、気づきましたが、そういえば、三十木谷姉弟がダラさんと出会ってから、まだ半年も立っていないのですね。こちらでもびっくりしました。

 過去編では割と時間が数か月や数年単位で飛ぶこともあるので、その影響もありそうですが、私が経過時間の誤認をした最大の原因は三十木谷姉弟とダラさんの日常が濃すぎるせいですね。

 いや、経過時間を改めて確認して本当にびっくりしました。

 そして、衝撃の事実発覚。ダラさんの両足は姉巫女の足もろとも谷跨斑の餌になった様ですが、呪物と化したダラさんの本来の右手が数百年前から行方不明。

 ダラさんが危険視しない理由の説明はありましたが、それでもお茶をすすりながらの「知らん間におらんかった」には笑いました。この巻の過去編を見るに、祠に封印されている左手以上に不味い代物の様なのですが。

 そして、真剣な顔で大妖・谷跨斑について考えるダラさんと、その谷跨斑の現状にも笑いました。

 ダラさんが真剣な顔で自分が勝てる可能性が低いと考えていますが、実際の谷跨斑は大幅にパワーダウンしているのですよね。

 不運(転生ガチャで大爆死)と予定外の出費(憑依ショックで死にかけた周の肉体の回復・改造)でためこんでいた妖力を失い続けて素寒貧。さらに周に取り憑くために魂を分割して生命力も大幅ダウン。

 ダラさんが想定した「今の自分が谷跨斑に勝てる状況」。自分に都合がよすぎる妄想であると彼女が思考の外に追いやった想定と同様か、それ以下の状態になっています。

 ダラさんに勝つために「やってはいけないこと」を全部やったみたいな状態ですね。警戒するダラさんと、実際の谷跨斑の現状のギャップが凄いことになっています。

 物語の都合上起こりえないことだと思いますが、今の谷跨斑をダラさんが見たらどんなリアクションをするのかに興味があります。

 

タガメサマとお守り大活躍

 三十木谷姉弟は父・ウィリアムと共に、親戚を訪ねて海の街へ。

 この回はいつもと大分印象が違いましたね。

 いえ、薫がオチで超常的なセクハラ行為に走っていたり、妖怪みたいだったりする所はいつもどおりでした。

 彼が海に入って「イヒャホホホ!!」という奇声を発しているコマで西洋のマーメイドじゃない方の人魚を連想。日本の人魚です。昔見た絵にこんな構図があったような気がします。そんなわずかな共通項から即妖怪を連想してしまうのは、彼の日頃の行いや、その場面での漫画表現等に原因がありそうです。

 そんなことを考えていたら「ウオオオオオオオ――――ツツ!!!」のコマもひょうすべに見えてきました。

 それはさておき、いつもと違う印象を感じた理由はいろいろありそうです。

 ダラさんが祀られている地元から離れた場所でのお話で、日向が薫とは別行動。単純に山から海へという景色の違いもありそうです。

 さらには、ゲストポジションの少年・柳友隆(ヤナギトモタカ)に、ダラさん以外の神様・ワタガメサマや悪霊までもが登場。

 自分の曾祖母の言葉を信じ、今はもう祀られていない海神・ワタガメサマの祭場跡に通う友隆少年。

 日向はその場所に「ぞっ」とするものを感じながらも、友隆少年を放っておけずに後を追います。

 日向が倒れて岩の角で足を切りますが、この岩が妙に平たいのですよね。もしかしなくても供物をささげる時に使う台。そして日向が「供物台」の上に倒れたこのタイミングでおぞましい悪霊が登場。

 現代パートなのに完全にホラーです。しかも今回は日向が当事者。

 そして、ついに日向が誕生日にダラさんに貰ったお守りが大活躍。

 ダラさん召喚可能エリアの外だったために、日向自身の霊力を使っての権能の行使という話でしたが、絵面が面白いことになっていましたね。

 霊能力者が自身の体に神様を降ろすタイプの変身。

 伸びる髪、背中から生えてくる腕、煌めく刀。よく見ると蛇の口の様なものまであります。

 それにびっくりする友隆少年に、日向自身。面白かったです。

 このワタガメサマのお話は、作品世界における人と神さまのつながり方についても描いていて、もしかしたら、ダラさんが将来どうなっていくのかという部分にも、関わってくるエピソードだったのではないかと思っています。

 

ポータブル谷跨斑(分霊)VSダラダラダラさん(呪いの人形)

 周にとりつく谷跨斑の分霊と、ダラさんがニアミスをした第二十五怪。最初から最後まで笑いっぱなしでした。※シリアスな過去パートは除きます。

 谷跨斑サイドの視点中心に描かれているのも面白かったですね。

 谷跨斑も今の自分ではダラさんに勝てないことはわかっているので、周を操り遠ざけようとします。「三十木他の家とは関わらぬようにするのだ!!!」。

 ページをめくると三十木谷の家でのお泊り会にお呼ばれする周の姿。とてもいい笑顔です。果たして谷跨斑の力が弱いのか、周の日向への煩悩が押さえつけられないくらいに強いのか。笑いました。

 ここから先も谷跨斑にとって想定外のことばかりが起きて、そのたびに笑いましたね。

 一番笑ったのは三十木谷の家に入った途端、ダラさんとエンカウントしてしまった場面でしょうか。

 薫に呼ばれて遊びに行ったら、日向の友達が大量に押しかけてきたダラさん。※谷跨斑には気が付かず。

 家に入った途端、一番出会ってはいけない相手に出くわした谷跨斑。

 おなじコマでの2人のダブル「うわああああああああああああ」が面白すぎました。

 叫びの「あ」の数までぴったり一緒なのも芸が細かく、地味なネタだからこその面白さがありますね。

 そして、薫がダラさんの切った髪の毛から作り上げてしまった呪いの人形、ぬいぐるみ「ダラダラダラさん」が大活躍。

 ダラさんも帰った後の丑三つ時。深夜に薫のベッドに這い寄る谷跨斑。ところが、誰もいないはずの廊下から聞こえる「ずるっずるっ」という音。

 薫を襲う怪異ポジションだったはずの谷跨斑が、逆に怪異に襲われるポジションになっていたのが笑えましたね。

 薫の部屋に置いていあったはずのダラダラダラさんがなぜ部屋の外から登場するのかと思っていたら、台所まで包丁を取りに行っていたのですね。谷跨斑に対する殺意の強さに笑い、包丁を大ぶりの刃物の様に構えるぬいぐるみの絵面にも笑いました。

 この回は全体的に面白すぎました。

 

 

 薫と周の寝言の「イヒヒヒ」と「ウヒヒヒ」に笑いました。いろいろと妖怪じみた2人ですが、書き文字の字体セレクトが秀逸です。やはり、この漫画は描き文字にも特筆するべきものがありますね。

 薫のことを最後まで日向の「妹」であると勘違いしていた谷跨斑。この辺りにも、今後、面白いことが起こりそうな気配を感じています。

 今回も最初から最後まで余すところなく面白かったです。