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狐のお嫁ちゃん6巻 感想


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 サダさんの妊娠に、化け狐としてのお嫁ちゃんのレベルアップ。そして、ついにお嫁ちゃんと旦那さんの間にも訪れる人生の転機。『狐のお嫁ちゃん』6巻の感想です。

 

ジョージさんと、サダさんの出産

 サダさんの夫である写真家のジョージさんがようやく帰宅。ちなみに、ジョージさんは呪いの仮面を着用済み。

 民俗学ジャンルの写真を撮っている人で、以前、南太平洋の某部族の神事に関わってから仮面が外れなくなったということらしいです。

 本人もサダさんもそのことはまったく気にしていないようですが。

 研究分野が近いということで、旦那さんとはお酒の席で意気投合。こういうテンションの旦那さんは珍しいですね。

 サダさんとお嫁ちゃんも仲良しですし、サダさんと旦那さんは旧知の間柄ですし、ご近所づきあいも安泰ですね。

 サダさんの出産の際は、分娩室を大量の安産祈願の人形で埋め尽くし、自身も民俗学チックな仮装をして魔除けの儀式をするジョージさん。このでっかい仮面は普段の仮面の上からつけているのでしょうが、ちゃんと視界を確保できているのか心配になります。

 安産祈願の人形の中にはお嫁ちゃんからもらったフェルト人形もありました。首飾り付きは何気にレアバージョンです。

 分娩室に入ってきた助産師さんが悲鳴を上げたのには笑いました。

 分娩室が木彫りの人形やら何やらに埋め尽くされて、大きな仮面をかぶったでっかい人が太鼓をドンドコ鳴らしていたわけですからね。悲鳴を上げたくなる気持ちはわかります。

 おまけページの新婚旅行先でテンション上がって、ベッドの上で飛び跳ねる2人のカットにも笑いました。似たもの夫婦なのだなあとほっこりしました。

 

お嫁ちゃんと母上と神通力

 狩猟中のお嫁ちゃんとバッテンの前に姿を現したお嫁ちゃんの母上。

 上からな態度ですぐに娘をやり込めようとする母上に、母上の顔を見た途端に場所を変えようとするお嫁ちゃん。相変わらずの2人です。

 何とか取り成そうとする父上とバッテン。再び顔を合わせた途端に喧嘩を始めた2人に唖然とする2匹の顔が面白かったです。

 お嫁ちゃんと同様に、ちゃんと人界での手続きに則って狩猟登録している母上。

 何でもなさそうな顔をしていますが、娘と交流したくて、面倒な勉強をして、手続きを踏んだと思うと、逆に何でもなさそうにしていることに母上の意地の様なものを感じることができるかもしれません。

 狐であるが故に、試験慣れ、勉強慣れしていないお嫁ちゃんは、勉強と手続きでフラフラになっていましたからね。

 まあ、母上は天才肌の様なので、本当に何とも思っていない可能性もありますが。

 母上との交流を通して、神通力の萌芽を見せたお嫁ちゃん。いずれ『天眼通』の習得も可能とのことでしたが、お嫁ちゃんが矢鱈と射撃がうまかったり、3巻21話で山に入ってきた猟犬の気配を感じ取ったりしていたのも関係あるのですかね。

 

狐の寝巻とイッヌ対策

 人との間に子を成したいなら、「妊娠期間中はずっと人の姿を保たねばならぬ」との情報を母上から聞き出したお嫁ちゃん。

 大事な話なのですが、このことを旦那さんに話しているお嫁ちゃんの狐耳フード付きパジャマで噴きました。

 「全ケモになれぬ間少しでもケモみを味わってほしいと思うてな」というお嫁ちゃんの心遣いだったわけですが、事前説明なしに唐突にやられると笑いますね。

 パジャマの説明をする前に、神妙な顔で化け狐が人の子供を授かる方法の話をしていたお嫁ちゃん。

 神妙な顔と服装のギャップが、化け狐が狐コスプレをするカオスな状況が、絶妙に笑いを誘います。

 旦那さんも大事な話より服の方が気になってしまっていた様ですが、気持ちはよくわかりました。

 後日、お嫁ちゃんは妊娠計画において最大の懸念となる犬嫌いの克服を目指します。1巻でもデート中に犬に囲まれて変化が解けてしまっていましたからね。

 まず慣れるために犬の動画を見ます。狐目線での脅威度の差で犬種によってリアクションが変わるのが面白かったですね。シェパードとか動画でも一杯一杯。

 ユリさんに頼んで犬に触れ合わせて貰いますが、猟師のユリさんが連れて来る犬は当然猟犬であるわけでして。

 猟犬たちの顔が絶妙に怖くて笑いましたね。なんというか、とにかく凶悪さを強調した顔とかではなくて、実際に存在しそうなラインでのリアルにいかつい犬相。

 お嫁ちゃんは魂が抜け掛けますが、何とか犬嫌いを克服し、緊急回避モード「半ケモで堪える」も習得しました。

 このお嫁ちゃんが犬嫌いの克服を目指す45話は、お嫁ちゃんのいろいろな表情と、リアクションが見られて、お気に入りの回なのですが、唯一の不満は半ケモに対するユリさんのリアクションが描かれていないことですね。

 ユリさんがお嫁ちゃんの半ケモを見る機会はないと思っていたのですが、せっかく目にする機会があったにも拘らずリアクション無しとは。

 構成の都合もあるとはいえ、それこそ幕間の短編でもいいのでリアクションが見たかったですね。

 

お嫁ちゃんの妊娠

 サダさんの妊娠・出産を通して、人間としての出産の心構えを新たにするお嫁ちゃん。

 野生の動物でも出産は一大事ですけど、人間の出産はもっと大変です。

 人生的な意味でも一大事ですが、命の危機的な意味でも一大事ですからね。

 人間が人間として進化した際に獲得したいくつもの利点。そのしわ寄せが難産を始めとした出産のリスクになっているという話を聞いたことがあります。直立二足歩行型の骨格とか、脳の大きさとかですね。

 いざという時のために、遺書まで用意していたサダさんを見て、出産への心構えを改めるお嫁ちゃん。

 そして、犬嫌いも克服した後に、めでたく妊娠が発覚。

 コウノトリの伝承を知らなかったのに、夢で見たのも神通力の一種ですかね。

 

 

 久々に大ボケをかました田端さん。嘱託職員である自分の任期を1年間違えていたという特大のボケですが、実際にこういうことありますからね。稀ではありますけれど。

 将来への不安で苦しむ彼女の様子と、定年を迎える館長の送別会を自分の送別会だと、乾杯の音頭の瞬間まで勘違いしていた彼女の大ボケの組み合わせは、読んでいて情緒が混乱しました。

 相変わらず、笹山さんとはいいコンビ。

 笹山さんと言えば、猫に猫撫で声で話しかける現場をお嫁ちゃん達に目撃されて、無言でそそくさと立ち去る場面も良かったですね。

 次巻はついに『狐のお嫁ちゃん』最終巻です。