コミックコーナーのモニュメント

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クミカのミカク2巻 感想


クミカのミカク(2)【特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)

 

 巻頭から雪にはしゃいで触手パタパタするクミカさんがかわいい。クミカのミカク2巻の感想です。

 

クミカさんがかわいい

 8話の見開き扉絵で、買い食いシーンがあるのですが、ここのクミカさんがかわいかったです。アメリカンドッグを持ち上げる触手がチャーミング。

 生真面目な性格ながらも、素の部分に子供のような純真さが残るクミカさん。色々な部分にそれがにじみ出ているのがまたいいですね。巧みな表情の描き分けと、目や口以上にモノを言う彼女の触手のアクションがかわいいです。

 ミウラちゃんちの炬燵でぬくぬく。こたつむりの最強さ、炬燵の強さを確認している場面の間の取り方と表情がいいです。

 特辛麻婆豆腐を食べさせられた回は、触手のアクションがはじけた回でした。まさか火を噴くとは。鎮火した後の描写も、汗で張り付く服、垂れる汗、出たままの舌と、精緻な描写が素晴らしいです。そして、落ち着いた後に「おいしい」と爆笑するクミカさん。リアクションも素晴らしい。

 ドッキリのサンタクロースを信じちゃった話では「いい子って…そんな歳じゃないよ…」の1コマ。ここの表情がいいです。

 年の暮れに帰省組を見送った後の表情も良かったです。触手でバイバイしてエイリアを見送ったコマと、その直後の「……寂しい…つ」のコマの落差。そして、そこから見知らぬ家族連れとのやり取りがあった後の「ちょっともう泣きそう」で2段階になっているのも面白かったです。同じ寂しい顔でも、ぐったり落ち込む感じの1段階目と、必死に涙をこらえながら触手もプルプルしている2段階目で、段階を踏んで悪化していくのが面白いです。

 もうクミカさんがかわいいという話はいくらでも出来そうなのですが、どんどん新しい表情が出てくるのが凄いです。美味しいものを食べた時のリアクションはもちろん、もっと細かいさりげない部分でも、次々に新しい表情表現が出てくるのが素敵です。

 

エイリアちゃんもかわいい

 10話はエイリアちゃんとクミカさんが休日に遊びに行くということで、エイリアちゃんの回なのかなと思いきや、「休みの日に誰かと遊びに行く」という初めての体験にテンションが上がりっぱなしのクミカさんのかわいさが炸裂。

 目をキラキラさせたまま触手をブンブンしていたと思ったら、翌朝も布団に入ったまま触手をブンブン。興奮で寝付けず、目の下に隈を作った状態で触手ブンブンを続けるクミカさん。

 前日の目をキラキラ触手ブンブンの正統派のかわいいと、翌日のおかしなテンションでの触手ブンブンの何処か残念なかわいいが、陸続きといいますか、一連の出来事という感じなのが面白かったですね。

 一晩の間、触手ブンブンしっぱなしで、筋肉痛になったりしないのかと少し心配になりました。

 エイリアちゃんは、アニメショップに入店した直後の尻尾パタパタがかわいかったです。

 しかし、いきなり友達をアニメショップに連れて行って、興奮のままはしゃぎ回って、オタクじゃありませんというのは無理がある気がします。1巻の女子会の時点で部屋にコレクションらしきものがありましたし。

 それにしても、異星向けの地球説明会は、エイリアちゃんの所での魔法少女に、クミカさんの所でのロボットアニメと、日本のサブカルチャーが推されているのはいいのですが、フィクションではないと思われていたとは、どんな説明会だったかが気になりますね。

 エイリアちゃんの回想でも、クミカさんの回想でも、説明会に来た方々がいいリアクションをしていました。

 この回の新しいミカクはサイダーでした。自分のげっぷにびっくりするクミカさんもかわいかったです。

 ただお金を稼ぐために地球に来たクミカさんが見つけたもの。気付いたこと。

 友達との一時「サイダーの泡の様にはじけて消えてしまうけれどかけがえのない時間」。ぱちぱちと火花のような光を発する触手の演出と、クミカさんの表情。

 唯々楽しい場の空気と、触手のエフェクトを連動させる演出も素敵でした。

 

キヨシゲ君の告白

 長い営業の旅から帰ってきた人たらしのキヨシゲ君。クミカさんと同期の人です。

 彼が思わずクミカさんに惚れてしまった居酒屋での一幕は、これは惚れても仕方がないなという説得力がありました。

 彼の知っている昔のつんけんしていたクミカさんと、今の食いしん坊クミカさんとのギャップに、ただただびっくりしていたキヨシゲ君。

 それが、おいしそうに焼き鳥を頬張り、自分にも「食べる?」と差し出した時のクミカさんの笑顔にやられてしまうわけですが、話の流れがどうとか、物語の展開がどうとかではなくて、この笑顔だけで説得力十分です。

 焼き鳥を持ったまま、対面の座席のキヨシゲ君の顔の前まで、にょいんと伸びる触手。楽しげに明るく輝く触手の光も間近でお届け。そして何よりその笑顔。

 人間的な表情のかわいさと、地球人ではない外星人ならではの触手のかわいさが、混ざり合って融合して、爆発した場面でした。これは惚れても仕方がありません。

 帰り道でキヨシゲ君に突然告白されたクミカさん。

 浮き上がる地球人とは違う瞳孔の形。真っ赤に染まる顔。これまた面白い光り方をする触手。さりげなく開いたままになっている口元。こちらもいい味のある表情でした。

 

混沌のお花見回

 14話は会社の面々でお花見に繰り出すのですが、この回は混沌としていて、とても面白かったです。

 前話のラストで、キヨシゲ君から告白されたクミカさん。お花見の場所取りをしながら悩むのは、告白への返事をどうするかです。

 そんなクミカさんが、相談をするのは、一緒にお花見の場所取りに来ているチヒロさん。

 ちなみにチヒロさんはクミカさんのことが好きで、気持ちを伝えられないでいるうちにキヨシゲ君に先を越されてしまいました。そのことを知っていて、2人にお花見の場所取りを命じるイズル社長は鬼ですね。

 チヒロさんがダウンしたタイミングで、キヨシゲ君以外のメンバーが到着。そのままお花見が始まります。

 しかし、お酒が持ち込まれたことで、場はどんどん混沌としていきます。

 酔っ払いのボケに乗っかってボケる酔っ払い。酒瓶を抱いたままダウンしているチヒロさん。すでに出来上がった状態で合流するキヨシゲ君に、酔っぱらって呂律が回らない状態のまま、笑顔でキヨシゲ君をふるクミカさん。囃し立てる周囲。

 ついに、出流原デザインの良心であるエイリアちゃんも、お酒に逃げるほどに、場は混沌として行きます。

 そして、気持ちよさそうにお弁当をぱくついて、アルコール摂取をしていたクミカさんの生え際から、大量の触手が伸び始めました。

 明らかな異常事態なのに、周囲のリアクションが、笑って騒ぐで統一されています。酔っ払いしかいません。

 ダウンしていたチヒロさんが目を覚まし、酔っ払いどもがふと我に返ると、そこには巨大な触手怪獣と化したクミカさん。何というカオスな展開。

 これまでも空を飛んだり、火を噴いたり、想像の上を行く触手リアクションを見せてくれたクミカさんでしたが、またしても想像のはるか上を超えてきました。絵面が凄いです。

 最終的に、ちひろさんが男を見せて事なきを得ましたが、暴走したクミカさんを止めようとする酔っ払いたちはどこまでも酔っ払いで、混沌に次ぐ混沌。

 前話の告白の衝撃から続き、酔っ払いが大はしゃぎし、笑顔でキヨシゲ君をふって、触手怪獣大暴れ、最後にクミカ救出大作戦。最初から最後まで混沌とした回でした。

 混沌とした中で、シリアスとコミカルも混ざり合っています。

 絵面はシリアスだったのに、全体像はボケでしかなかったり、シリアスかと思ったらやっぱりボケと見せかけて、シリアスとボケの間で揺蕩ってシリアス寄りの空気で落ち着いたりと、面白い味が出ていました。

 

 

 チヒロさんが元ヤンだったのも意外でしたが、クミカさんのサンタクロースの夢を守るために、仕込みなしで4階から3階の窓枠に飛び移るアグレッシブさに何より驚かされました。

 回を重ねるごとに、どんどんクミカさんの新しい表情が出てくるのが、この漫画の素敵な所ですが、キャラクターの魅力に焦点を当てた漫画として考えるなら、それ自体は当たり前のことです。

 この漫画の何が凄いって、毎回毎回、本当に「新しいもの」が出てくることです。

 単にクミカさんが新しい体験をして成長するという意味だけではなくて、そのままの意味での表情描写をはじめとして、漫画的な表現の仕方で毎回何らかの「新しいもの」が出てくるということです。

 日常の一幕の微妙な表情表現も、おいしいものを食べた時の表情も、触手芸も、漫画的な演出も、毎回新鮮です。

 これが小野中先生のデビュー作だったということに驚きます。何という多彩さでしょう。