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シンプルな面白さに遊び心を一匙。いや、もう何匙か追加した短編集。 : Present for me 石黒正数短編集 レビュー


Present for me 石黒正数短編集 (ヤングキングコミックス)

 

タイトル:Present for me 石黒正数短編集

  作者:石黒正数

  年代:2007年

  巻数:全1巻

 

あらすじ・概要

 『それでも町は廻っている』や、『天国大魔境』の石黒正数短編集先生の初期短編集です。

 石黒先生は連載作品の他に、短編集をいくつも出している漫画家ですが、この短編集はその中でも初期に描かれた短編作品の多くが収録されています。

 全部で7つの短編の内、表題作である『Present for me』以外は全てギャグやコメディーというお笑い多めの構成です。

 デビュー作である『ヒーロー』も収録されています。

 

表題作:Present for me、デビュー作:ヒーロー、他5作

 私が読んだのは電子書籍版でしたが、何故か目次も、収録作品の一覧もなかったので、まとめたものをここに記載しておきます。

 順番は短編集に掲載されていた順、タイトルの後ろのページ数はその短編の始まるページではなく、尺の長さです。

 

『ススメ サイキック少年団』25ページ。

『Present for me』24ページ。

『なげなわマン』18ページ。

『カウントダウン』20ページ。

『バーバラ』8ページ。

『泰造のヘルメット』20ページ。

『ヒーロー』31ページ。※石黒先生のデビュー作。

 

 全体的には読みやすく、わかりやすく、その上で面白い漫画という印象でした。

 デビュー作から初期の頃の作品ばかりであるにも拘らず、絵の構図や、コマ割りはわかりやすく、テンポも良くて、読者に優しいストレスなく読める漫画です。

 その一方で、所々に妙にブラックな部分があったり、一部の漫画表現や、演出に遊び心が見て取れたりと、いい意味での癖の強さと言いますか、独特な味もありました。

 表題作の『Present for me』はポストアポカリプスな世界で、壊れて身動きの取れなくなったロボットと、孤独な少女が出会うSF作品。表紙の2人のお話です。

 独特の演出と、物語の結末、クライマックスの場面の雰囲気がいい味を出していました。

 星新一先生のショートショートを連想する秀逸なアイディアと、漫画だからこそできる表現がとても良かったです。

 他の6作品は現代を舞台にしたギャグ・コメディー短編ですが、所々に時代を感じますね。この短編集の収録作品は2000年から2004年頃に描かれたものらしいので、だいたい20年前の景色が現代として描かれていることになります。

 『ススメ サイキック少年団』には、大友克洋先生の世界的に有名な超能力SFモノのパロディーが登場したり、『カウントダウン』からは、昔、藤子・F・不二雄先生の短編集で読んだとある作品を想起したりと、そういった意味でも時代を感じましたね。

 初期の作品ばかりを集めた短編集であることに加えて、石黒先生のデビュー作である『ヒーロー』も収録されているので、石黒漫画の原点を見てみたい人におすすめです。

 

こんな人にオススメです。

  • 肩の力を抜いて読める短編集をお探しの人。
  • 石黒正数先生の原点に興味がある人。

 

こんな人にはオススメできません。

  • 最新の石黒漫画が読みたい人。※この短編集の中身は初期の作品です。
  • ブラックなユーモアで笑えずに、不愉快になってしまう人。