コミックコーナーのモニュメント

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ライドンキング6巻 感想


ライドンキング(6) (シリウスコミックス)

 

 巨大海洋魔獣の巣窟を抜け、魔境=聖王国にたどり着いた大統領一行。

 今後の展開の方向性も見えてきた一方で、さりげないのから露骨なのまで飽和するパロディーに突っ込みが追いつかないライドンキング6巻の感想です。

 

巨大亀の迫力

 魔境の入り江・プルチノフ村の対岸にて、海の種族・トリトン族や、海竜の子供と出会ったプルチノフ大統領。

 海竜の子供からプルチノフ大統領の話を聞いて興味を持った亀嶋龍(ザラタン)が会いに来ますが、もういろいろと凄いです。

 海底から浮上してくる亀島竜の圧倒的なスケール。浮上時の波飛沫の描写や、その背中の岩山の質感の表現。

 見開き俯瞰図による亀島竜全身像、全身に対して小さく見える頭部と、その頭部と比較してさらに小さな豆粒ほどの海竜。

 ページ移行後の画面手前・海竜の背に乗る大統領たちと、画面奥の亀島竜の距離感が狂いそうな1コマ。

 亀島竜の巨体の迫力も凄い。

 ファンタジー感全開なのにリアリティーをはっきり感じ取れる絵としての表現力も凄い。

 圧倒的な巨体の迫力と、正しいスケール感を複数の構図を使って同時に伝えて来る漫画的表現力も凄いです。凄く贅沢な漫画です。

 犬顔のコボルトや、魚顔のトリトン族の表情表現を立体的にどの角度からもできてしまっていることもそうですが、もう本当に絵の表現力と、デザインを構成するセンスが凄まじい。凄まじすぎます。

 トリトン族なんてもう本当に一目でそうとわかるネタデザインなのに、じっくり見ると凄すぎて笑うに笑えなくなります。

 

プルチノフ大統領VS亀島竜(ザラタン)

 大統領に元の世界へ帰る方法を教える対価として、生贄を要求する亀島竜。明らかに乗り気ではない大統領に亀島竜は、拒むならお前の国を亡ぼすと脅迫を追加します。

 大統領はその増上慢(おもいあがり)に怒ります。

 僅かな犠牲を許容しないことを愚かだと言う亀島竜に「愚か者とはそんな空手形を信じる者のことだ。他者に命の選択を強いる者は、その後も必ず同様の選択を強いる者だからな」と大統領。

 この時、奥さんの顔を思い浮かべていたという事は、奥さんと死別した事情がこの辺りにありそうですね。大統領の場合、心の傷に触られたから怒ったという訳でもないのでしょうが。

 サキの高速移動の技をコピーどころか、空中で実践。距離も高さも関係なしに亀島竜の頭上を取ります。雷の属性は希少であると前に言われていましたが、そういえば大統領の属性って何なのでしょうね。少なくとも雷は使える様です。

 更に、亀島竜の頭蓋骨も、甲殻も余裕で貫通するエネルギー弾(仮)を速射。「竜の中で最も硬い」そうですし、サイズのせいで厚みもかなりあります。それをあっさり貫通します。

 亀島竜は慌てて「お前の良心と器を試して見たのじゃ!」と弁解しますが、大統領はそれも見越した上で怒っている様子。「他者を試しても許されると考えるのは、他者を下に見ている増上慢の証だ」とのこと。ごもっともです。

 最終的に大統領は亀島竜を許し友としますが、頭頂部から口内を経由し、顎側の甲殻まで貫通する攻撃をしたり、周囲の甲殻にまで亀裂が走る様な拳打を頭に食らわせたりしているのですよね。

 亀島竜の頭部が大きすぎたおかげで、たまたま脳に当たらなかったのでしょうか。容赦のない攻撃に大統領の怒りもまた本物であったことが窺えます。

 現地基準だと攻城兵器クラスすら超えていそうな大統領の攻撃力ですが、そんな威力の攻撃を速射&連射できる様です。空中まで込みで瞬間移動じみた速度で移動し、格闘技術に関しては言わずもがな。

 元々飛びぬけていた大統領の戦闘能力がここに来て天井を突き抜けてきた感じです。

 

掴め!7つの竜穴(ドラゴンホール)!!※玉でもボールでもありません。

 他の生物の肉体を侵食し増殖する肉瘴気(にくしょうき)を退けた一行は、亀島竜の背中の太陽竜宮殿(サン・ドラパレス)で世界の理に関わる話を聞くことに。

 肉瘴気の正体、竜の役割、この世に張り巡らされた魔素の道である「龍脈」と、それを使って古代人が星の海すら超えていたこと。

 プルチノフ大統領の転移の件にも関わりがありそうな、物語の確信につながりそうな新情報が色々と明かされました。

 そして、今後の物語についてあれこれと考え始めかけたところで、「ドラゴンホール」で全て吹き飛びました。

 世界を巡る龍脈から莫大なエネルギーを引き出すことのできる穴であり、古代人が宇宙を渡るための中継点として使い、プルチノフ大統領の圧倒的な力の源でもあるらしい「龍穴(ドラゴンホール)」。

 大統領自身が生きた龍穴であるという驚きの事実も明かされましたが、「龍穴(ドラゴンホール)」という超特大のネタに持っていかれて、それどころではありませんでした。

 大統領は「竜で宇宙を…」という所に気を惹かれて途中から話を聞いていなかった様ですが、私も一度それまでに聞いた話が全て吹き飛び、読み直してようやく話に追いつきました。それぐらい破壊力がありましたね。

 「その7つの竜穴(ドラゴンホール)を手中に収めた者こそ!この世界の覇者となるであろう!!」とのことでしたが、その前後のセリフに細かくしこまれた露骨なネタの数々といい、「7」という数字といい、分かる人にだけ分かればいいという細かいパロディーとは明らかに違います。

 読者全員が気付くように、突っ込まずにはいられない様に、全力全開でパロディーをぶち込んで来る姿勢に全部持ってかれました。もちろん大笑いしましたとも。

 

城亀竜ドナテロ

 竜へと進化したばかりで元の大きさに戻れないキャルマ―の代わりに、大統領たちの冒険の足となることになった亀島竜の子亀・城亀竜のドナテロ。

 プルチノフ村のオーク達の間で流行っているという肉とチーズを無発酵パンに載せて焼く料理を気に入りそうな名前です。

 何となくですが、他にレオナルド、ミケランジェロラファエロという名の兄弟亀がいそうな気もします。

 亀であると同時に竜でもあるドナテロの飛行形態は、平成版ガ○ラ・徳間版○メラの高速飛行形態を連想しました。

 甲羅の一部が翼として展開する辺りにオリジナリティーも感じます。何回か見ていたら、甲羅と翼のバランスがスーパー○リオシリーズの○タパタに見えてきましたが。

 この作品はパロディーが多すぎて、どれもこれもがパロディーなのではないかと疑心暗鬼になってきます。

 いずれにしても、二重の甲羅の外側が翼状に開くギミック、変形過程が理解しやすいデザインの前足、ただ引っ込めて火を噴くだけではない細かい所まで形状が理解できるように描写された後ろ足に、行き過ぎない程度にメカニカルな印象の首と、相変わらず馬場先生のデザインセンスが光っています。光り輝いています。

 空が飛べて、その体内で生活できる巨大生物。ファンタジー的な浪漫も満載。

 物語的にも、生活拠点を兼ねて、山や海といった地形も無視できる高速移動手段のゲットでテンポアップ。和製のRPGだと空飛ぶ乗り物は物語の終盤に入手するのがお約束ですが、大統領の冒険はまだまだ続きそうなのでその点は心配しておりません。

 

死の谷と筋肉

 死の谷の牙・エドゥに、聖王との取次を頼むため、死の谷へとやってきた大統領一行。

 王闘鬼(キングオーガ)が気持ちよさそうに溶岩温泉に入っているのを見て、「死の谷」という地名のイメージが変わりました。なるほど「死の谷」とはそういうニュアンス。日本でもやたらと物騒な地名の温泉地などがありますからね。

 五龍斧術(ごりゅうふじゅつ)や、雷宮瓶球術(らぐびんきゅうじゅつ)、牙素燐風呂(がそりんぶろ)といったネーミングや、王闘鬼たちの呈示する無意味にバイオレンスな勝負方法は、某男が通う塾な漫画のパロディーですね。

 他の漫画などでも散々パロディーに使われていたり、何処かしらで見聞きしたことがあったりで、私は何となく知っているだけで直接読んだことはありません。

 にも拘らず、元ネタを録に知らなくてもなんとなくだけで伝わってくるのは凄い気がします。元ネタの漫画のインパクトも、この漫画のパロディーもです。

 特に意味もなくバイオレンスでありながらも、楽しげな王闘鬼たちと、見事に馴染んでいる大統領。画面の中の筋肉の作画密度が凄まじいことになっています。笑いました。

 そして、大統領とエドゥの決闘となるはずが、あふれ出した肉瘴気によって急展開。

 プルチノフ大統領とエドゥの戦いは、てっきり普通に決闘をする流れになるかと思っていましたが、この展開は驚きました。

 場面展開に説明漏れも取りこぼしもなく、だれて冗長になることなく加速する物語。無駄のない話運びのテンポに、凄まじい画力とクオリティー。圧倒的な漫画力には驚くばかりです。

 

 

 今巻おまけページで、乗り手の技をラーニングすることをはっきり解説されたホッチ達ですが、ドナテロとの競争に負けてへばっていたホッチ達の内、1羽だけ平気そうな顔をしていたのはサキのホッチですかね。あの技をラーニングしたのなら、彼もしくは彼女はホッチ達の中でもスターになりそうな気がします。

 本編を読んだ時は気付きませんでしたが、「一角大怪獣の角」に「ラプラホーン」とルビが振られていたのは、お台場のガン〇ムネタでしたか。相変わらずおまけページまでネタとパロディーの宝庫です。